2021年度中とされていた文化庁の京都移転が、先送りされることになった。早くても22年度の後半以降になる見通しという。

 移転先となる府警本部庁舎の耐震改修と新行政棟の新築工事が遅れているためだが、移転の準備期間が短く、かねて間に合わないとの懸念があった。

 東京一極集中の是正を目指す安倍晋三政権は14年に地方創生策の柱として政府機関の地方移転を打ち出したが、規模縮小や見送りが相次ぎ、本格移転が決まったのは文化庁しかない。

 萩生田光一文部科学相は、政府の移転計画に無理はなかったと強調した。だが、成果を急ぐあまり、準備がおろそかになってはいなかっただろうか。

 文化庁の京都移転に向け、すでに同庁地域文化創生本部が京都市内に移っており、本格移転後には長官を含めて職員の7割弱に相当する約250人が京都に勤務し、国会対応や外交、他省庁との連携を除く全ての業務を担う。

 18年には文化財保護法が改正され、保存を重視してきた文化財行政は、活用も促す新たな局面に入った。観光やまちづくりなどに文化や文化財を生かす上で、多くの資源がある京都で施策を立案し、発信する意義は大きい。

 政府機関の地方移転を巡っては、政権の意向と裏腹に省庁側の反発が大きかった。文化庁内には今も、政策や意思の決定が円滑に行えるのか心配する声が根強い。

 昨年の臨時国会中には、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」への補助金不交付問題や沖縄県の首里城火災への対応で、地域文化創生本部の職員が何度も京都と東京を行き来し、政府内での調整や与党への説明に追われたという。

 今回の移転延期は、庁舎完成の遅れが避けられないとして整備を担う府側から示された。一方で、文化庁側も、京都と東京の情報共有や役割分担、職員の意識改革に課題を残してはいないか。

 文化庁は18年10月に京都移転を見据えて文化財などの分野別に分かれていた縦割り組織を改編した。東京を離れても円滑に業務ができる態勢づくりは1省庁だけではできない。政府の責任で進める必要がある。

 政府は20年度から地方創生の第2期戦略に取り組むが、第1期(15~19年度)の間にも人口の東京一極集中は加速している。計画通りに政府機関の地方移転が進まなかったことも一因といえよう。文化庁の京都移転を前にいま一度、課題を総点検すべきだ。