曜変天目茶碗の再現に挑む土渕さん(京都市東山区・陶葊本店)

曜変天目茶碗の再現に挑む土渕さん(京都市東山区・陶葊本店)

曜変天目の再現を目指して土渕さんが作った器

曜変天目の再現を目指して土渕さんが作った器

土渕さんが作った器。光の角度でさまざまな色が浮かぶ

土渕さんが作った器。光の角度でさまざまな色が浮かぶ

 黒い釉薬の中に、星のような斑紋が浮かぶ「曜変天目茶碗(ようへんてんもくちゃわん)」。中国・宋代に作られ、その後、技術が途絶えた茶碗の再現に、京都の陶芸家が挑んでいる。2年をかけて作り上げた茶碗をギャラリーで展示している。

 曜変天目は、茶碗の内側の斑紋の周囲に、見る角度によって紫や黄に変化する光彩が現れ、「小碗の中の大宇宙」とも称される。12~13世紀、福建省の建窯(けんよう)で作られたとされ、完全な形で現存するのは日本に伝来した3碗(すべて国宝)のみ。茶碗の最高峰と位置づけられてきた。昨年には、MIHO MUSEUM(甲賀市)の春季特別展で、鮮やかな光彩を放つ斑文が特徴の大徳寺塔頭の龍光院(京都市北区)所蔵の曜変天目が公開され、注目を集めた。
 再現に挑んでいるのは京焼・清水焼の窯元「陶葊(とうあん)」(京都市東山区)の4代当主、土渕善亜貴さん(40)。研究熱心だった先代の父親が「曜変だけはできない」と話しており、いつか再現したいと考えていたという。
 曜変天目は東洋陶芸史上の大きな謎とされ、多くの研究者や陶芸家が解明に挑戦してきた。土渕さんは再現のために窯を新調し、京都市産業技術研究所(下京区)の研究データや、同研究所名誉研究フェローの横山直範さん(66)の「建窯の釉薬をベースにしては」との助言を参考に、3千~4千通りの釉薬の調合や焼き方を試した。
 1年前、わずかに光彩が出た。窯が冷える際に酸素不足の状態にするなど特別な焼き方を調整し、昨年11月、茶碗の内側に無数の斑紋が浮かぶ茶碗が生まれたという。焼成温度や酸素濃度が調整できるように造った窯は計3基になった。鉛を使わない釉薬を使っていることが特徴の一つという。
 横山さんは「多くの陶芸家が再現に挑んでおり、それぞれの方法を編み出している。その一つになるのではないか」と話す。土渕さんは「特殊な土や釉薬を使っているのではなく、窯の中の微妙な環境の違いで曜変が起こるのでは」と推測する。
 現在は100の碗を焼いて、曜変は1、2個。土渕さんは「さらに完成度を上げて国宝に近づけたい。誰も見たことのない美しいオリジナルの天目茶碗を作りたい」と話している。
 ギャラリーは東山区泉涌寺東林町、陶葊本店に併設している。