新館長発表会見に出席した(左から)門川大作京都市長、三浦基さん、ロームシアターを運営する財団の長尾真理事長=ロームシアター京都、1月16日

新館長発表会見に出席した(左から)門川大作京都市長、三浦基さん、ロームシアターを運営する財団の長尾真理事長=ロームシアター京都、1月16日

三浦氏が次期館長に就任するロームシアター京都(京都市左京区)

三浦氏が次期館長に就任するロームシアター京都(京都市左京区)

 京都を代表する劇場「ロームシアター京都」(京都市左京区)の新館長に、京都市長が推薦した演出家の三浦基(もとい)さん(46)が4月に就任することに対して波紋が広がっている。三浦さんが代表を務める劇団「地点」(同市)の元劇団員がパワハラを受けたとして団体交渉を続けていることを巡り、劇団側はハラスメント行為があったことを全面否定。一方、19日にあったシアターの新年度ラインアップ発表では、複数の舞台関係者が「今回の人事の件で懸念があり、解決が見られない場合、(公演や催しの)延期・辞退の可能性がある」という異例の条件を付けたことが明らかになった。

 「不十分な発表になることをご了承ください」。シアターの橋本裕介プログラムディレクターが新年度に向けた会見冒頭、苦渋の説明をした。来年1月に新作劇を上演予定の松田正隆さん、演劇講座の講師を務める岡田利規さんが、この問題で疑問がぬぐえない場合は公演や催しの「延期・辞退の可能性」を申し入れ、シアター側も受け入れたという。ほかにも公演予定の舞台が同様の理由で発表が保留となっているという。
 三浦さんの新館長就任は1月16日に発表された。シアターは京都市が建て、市音楽芸術文化振興財団が運営。館長については、財団会長でもある市長が推薦し、理事長が任命する。三浦さんは2005年に東京から京都に活動拠点を移し、国内外で評価を受けていることを踏まえ、門川大作市長は「若さと可能性。三浦さんしか選択肢はなかった」と強調。三浦さんは「地元密着を本気で考える」と意欲を語った。
 市職員だった現館長の3月末退任に伴い、館長の権限を事実上の芸術監督を兼ねる形で広げ、さまざまな公演や企画の統括責任者としての役割も三浦さんに期待した形だった。
 一方、「地点」を巡っては元劇団員女性が2018年、三浦さんから退職を強要され、キャリアを否定する言動を受けたとして、映演労連フリーユニオンを通して、劇団側との団体交渉を昨年から続けている。
 今月14日には、演劇関係者16人と京都舞台芸術協会が連名で、こうした問題が係争中でありながら、公的な立場の館長職に推薦した経緯の説明を求める公開質問状を市に提出。代表で市役所を訪れた劇団「MONO」(京都市)の土田英生さんは「問題をクリアにしてくれないと、われわれ上演団体がパワハラを容認しているかのようになってしまう」と思いを語った。
 劇作家の平田オリザさんも自らの劇団サイトで声明を発表。「京都市の決定は、これまで演劇業界に蔓延(まんえん)してきたハラスメントに対して、それと闘っていこうという多くの人々の意志に水を差すものとなってしまいました。京都市側の見解を伺いたい」とつづるなど余波が広がっていた。
 市は「就任打診時、三浦さんから問題を聞かされたが、責任を持って対応すると言ったのを信用した」と説明する。
 ロームシアターは「事案が適切に解決されることを期待している。何をもって解決になるか、非常に難しいが、現場の職員は日々頑張りたい」としている。

■市も責任 解決策模索を

 京都の演劇事情に詳しい演劇評論家の太田耕人氏の話 三浦基さんは演出家として、抜群の才能があるのは間違いない。戯曲のテキストを解体し、独自のセンスで構造を浮かび上がらせる実験的な劇を作り、欧米でも高い評価を受けている。何が真実か分からない状況で余波が広がり、劇場の運営に大きな影響が出るようなことはあってほしくない。(パワハラをめぐり)団体交渉中という経緯を知りながら館長就任を要請した京都市にも責任があるのは確かなので、解決策を探ってほしい。