新型コロナウイルスによる肺炎の国内流行に備え、政府が対策の基本方針を決定した。

 感染症専門家らでつくる政府の専門家会議が示した「一人一人の感染を完全に防止することは不可能」との見解を踏まえ、死者の発生を食い止めるために重症患者の治療を優先させる方向性を明確にした。

 基本方針は国内で大規模な感染拡大は認められないと現状を分析したが、北海道など複数の地域では、どこで感染したのかはっきりしない患者が確認されている。

 専門家会議は「これから1~2週間が急速な拡大か終息かの瀬戸際だ」と指摘した。政府は都道府県などと連携して、医療態勢の整備を急ぐ必要がある。併せて、医療関係者を含む国民への適切な情報提供に努めなければならない。

 国は現在、風邪の症状がある人は都道府県の「帰国者・接触者相談センター」に電話した上で専門外来を受診するよう求めているが、基本方針は、患者が大幅に増えた地域が出た場合、一般の医療機関でも診察時間や出入り口を分けて感染の疑いがある患者を診察するとした。

 新型肺炎は高齢者や持病のある人は重症化しやすいと報告されている。関東近辺では、クルーズ船で700人近い感染者が出たことで、医療機関の感染症病床が満杯になりつつあるとの指摘があり、新たな重症患者に対応できない心配が出ている。

 一方で、新型肺炎は症状の軽い人が多く、気付かないうちに感染を広げてしまうとされている。和歌山県や熊本市の病院では医師や看護師の感染が判明し、外来診察が中止される事態になっている。

 重症患者を優先して受け入れる医療機関を決めておくなどの役割分担が求められる。感染疑いのある人を受け入れる地域の病院や診療所が適切な感染防止の態勢を取れるよう、専門家による支援も重要だ。

 基本方針は、濃厚接触者や軽症者への対応も転換させた。

 患者が増えた地域では、濃厚接触者に外出自粛を求めるだけにし、ウイルス検査は入院が必要な肺炎患者の確定診断のための検査に移行。軽症者は原則、自宅で療養してもらうとした。

 いずれも重症化の恐れがある人の治療に注力するためだが、在宅で静養している人が、他人にうつさないか、どこまでが軽症なのかを自分で判断するのは難しいだろう。

 日本感染症学会などは熱が4日~1週間続き、息苦しさやせきが悪化するようでなければ自宅療養で十分とする。在宅で症状が悪化することがないよう、受診の目安などを伝える必要がある。

 専門家会議は集団感染が起きやすい場面として「互いに手を伸ばすと届く距離」、「大勢が参加して一定時間以上会話する環境」を挙げた。基本方針は企業などに時差出勤や在宅で勤務するテレワークの推進を呼び掛けた。情報を受け取る側も、冷静にリスクを分析する力が求められている。

 手洗いなどうつらない対策と併せ、人にうつさないよう気を配る必要がある。