「甲賀忍者の真実ー末裔が明かすその姿とは」を出版した渡辺さん(甲賀市役所)

「甲賀忍者の真実ー末裔が明かすその姿とは」を出版した渡辺さん(甲賀市役所)

 先祖に甲賀忍者をもつ滋賀県甲賀市の渡辺俊経さん(82)が、「甲賀忍者の真実―末裔(まつえい)が明かすその姿とは」を出版した。20年間にわたる調査活動の調査成果をまとめた集大成で、高齢のため地域研究会の活動に区切りを付ける。中世の有能な集団「忍び」の形成過程と、知られざる実像に光を当てている。

 渡辺さんは定年退職で故郷の甲南町に帰った2000年に自宅の蔵で古文書を発見した。先祖が農業をする傍ら、尾張藩に忍びとして仕えた「甲賀五人組」の一人と分かり、町忍術研究会長や甲南地域史研究会長として調査に尽力した。渡辺家文書はその後、忍者研究の貴重な文献となった。
 今回の出版は甲賀忍者に対する世間の認識について「甲賀のことを分かっておらず、地元として物足りない」と感じたのがきっかけ。忍者の歴史を地域の視点に立って掘り起こしたいと執筆した。
 2部構成で、前半は甲賀忍者がいつ誕生し、一体何をしていたのか歴史をひもとく。古代から文化と情報が行き交う甲賀の風土や出来事、甲賀武士、忍術書など広範囲に考察を交え、読み物風にまとめた。後半は「甲賀望月家の由緒」「神君甲賀伊賀越え」といった研究論考を中心に持論を展開する。
 写真や図表、文書のほか、巻末資料として自治組織のルールなどが読み取れる史料を掲載した。現代に通じる民主主義の原則や自治の在り方を中世に実施していた高度な集団こそ甲賀忍者だったと分かる。
 関係資料を詳細に調べた渡辺さんは「学者ではないが、できる限り史実を反映させ、『遺言書』として書いた。甲賀忍者の真の姿と地域の歴史を、特に若い人たちに伝えたい」と話す。
 A5判164ページ。サンライズ出版。2640円。