縫い物から生まれた言葉だそうだ。「つじ」は縫い目が十文字になる所、「つま」は着物の裾の両端で、つじつまが合わなければ形を成さず、無理があるということだろう▼縫製ならぬ法制を揺るがしているのが、東京高検検事長の定年延長を巡るつじつまだ。検察庁法が63歳定年を決め、延長は適用されないという従来解釈を「今回変更した」とした安倍晋三首相の弁明から迷走が続いている▼長年の法解釈を改める以上、慎重に検討したはずである。森雅子法相は事前に法務省内で検討して口頭で決裁したと言い始め、人事院の局長は答弁の食い違いを「つい言い間違えた」と修正した▼首相が強弁を重ね、官僚らがつじつまを取り繕う光景を何度見ただろうか。森友学園問題では、財務省が決裁文書の改ざんに手を染め、現場担当者が自ら命を絶つ犠牲まで出ている▼強引な定年延長は、官邸に近い検察トップ起用への布石とみられている。かつて「憲法の番人」とされる内閣法制局の長官をすげ替え、集団的自衛権行使の容認にかじを切った手法とも重なる▼だが、検察や法制局が一定の独立性を与えられているのは、政府の暴走をしばる法治国家のブレーキ役だからにほかならない。政権が恣意(しい)的に支配するのでは、国民の信頼とのつじつまが合うまい。