京都府庁

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 京都アニメーション(京アニ)放火殺人事件で、京都府の義援金配分委員会がこのほど、事件の被害者70人に対する義援金の配分額を決定した。検討作業で難航したのは、算定基準の設定に必要な家族構成や負傷程度など個人情報の収集だった。被害者側に非課税扱いで義援金を届けるなど、犯罪被害者支援に新たな道を開く一方、識者からは、金銭的な被害救済に向けて公平な支援制度を求める声も上がる。

 配分対象は、事件の死傷者69人と現場の第1スタジオから逃げて無事だった1人の計70人で、義援金総額は33億4138万3481円。昨年11月の初会合以降、事務局の府が京アニを通じて被害者や遺族に個別の状況やけがの程度などを尋ねる調査票を送付。医療機関にも処置の内容を照会した。配分対象に無傷だった1人を含めるか、精神的苦痛も考慮するかなどの課題も検討し、3回目となるこの日の会合でようやく配分額の決定に至ったという。
 日本で犯罪被害者への金銭補償は、加害者側に資力がない場合は十分になされないのが実情だ。青葉真司容疑者(41)=殺人容疑などで逮捕状=も資力はないとみられるが、今回の事件では、全世界から30億円超もの寄付金が集まった上に、府が非課税で配分するという異例の経過をたどる。
 税制が専門の立命館大の望月爾教授は「税制優遇も含め、寄付を犯罪被害者支援に適切につなげた良い先例」と評価する。犯罪被害者支援に詳しい京都産業大の新恵里准教授も「算出方法などは国の犯罪被害者等給付金制度にならったと思われる。被害程度や年齢、子どもの数などが考慮されることは順当」とみる。
 一方、西脇隆俊知事は今回の府の対応について「一つの前例にはなるが、特別なケースで、普遍的な制度となるかは長い議論を待たなければならない」と慎重な見方を示した。
 また義援金の位置づけについて、府は「賠償金ではなくあくまで見舞金。全世界の皆さまから府が預かった金をルールに沿って配る」と説明し、公的な補償とは異なる点を強調した。
 新准教授は「毎日のように起きる事件にも被害者や遺族がいる」と強調し、「寄付はあくまで善意のものでいつも集まるとは限らない。寄付とは別に、確実な公的補償を考えていかなければならない」とする。望月教授も、今回だけの特例で終わらせてはいけないと訴え、「国は寄付税制の強化を、自治体は金銭的な支援の充実を図ることで今回の制度を普遍化していかなければ、今後の犯罪被害者との間で不公平が生じる」と指摘する。
 府は会見で個人情報保護を理由に配分の具体的内容を示さなかった。西脇知事は「ある程度(被害者に)納得いただける基準を示せたからこそ決定に至った」とする一方で、「(配分される)金額につながることは答えない」と述べるにとどめた。担当者も、基礎部分や逸失利益など4層構造からなる配分基準に関し、階層ごとの割り振り額や参照した制度などは明らかにしなかった。