「世界一高い薬」とされる、脊髄性筋萎縮症の遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」の国内での製造販売を、厚生労働省の専門部会が了承した。

 遺伝子治療薬としては国内2例目となる。3月中に正式承認され、早ければ5月にも保険適用される見通しだ。

 1回の投与で治療が終わるが、米国では日本円換算で約2億3千万円の価格が付いており、日本でも高額になる公算が大きい。

 遺伝子治療は将来の医療の主役になるともいわれる。既存の治療で回復が見込めなかった患者にとって、新薬が希望の光となるのは間違いない。

 一方で、高齢化に伴い医療費が膨張を続ける中、公的医療保険への財政影響が懸念されている。個人が負えないリスクを全体で分かち合う―。そんな制度の根幹が問われている。

 薬が高額になるのは、多額の研究費用に加えて、製造工程が複雑で大量生産できないことが原因とされる。医療技術の進歩により、超高額薬は次々と登場している。

 安易な使用制限へと傾けば、裕福な患者しか使えなくなるおそれがある。患者の利益を守りつつ、保険財政の維持を図ることが必要ではないか。

 他国での取り組みも参考にしながら、制度の在り方を見直していくことが求められる。患者や市民に開かれた議論が欠かせないだろう。

 脊髄性筋萎縮症は筋肉の萎縮や呼吸困難が出る難病。小児期までに10万人に1~2人が発症する。患者の多くが2歳までに亡くなるか、人工呼吸器を生涯装着する必要がある。

 通常、公的医療保険が適用されれば自己負担は1~3割で済む。月ごとの自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」もあり、ゾルゲンスマを使用する場合は、大半が公的保険でカバーされることになる。

 医療費は年40兆円規模で推移しており、うち約10兆円が薬にかかっている。がん治療薬「オプジーボ」は発売当初に患者1人への投与で年間3500万円かかるとして問題化した。

 昨年5月には一部の白血病や悪性リンパ腫に効果が期待される新型治療薬「キムリア」が3349万円の薬価で保険適用されたばかりだ。

 保険料を拠出する側の健康保険組合連合会(健保連)などは「薬の保険を適用する範囲の在り方を根本的に見直すべきだ」と主張している。

 薬によって負担の割合にメリハリをつける国もある。重症向けの高額薬を保険でカバーする一方で、市販薬で代替できるものは適用から外すといった対応も検討すべきだろう。

 既存の薬の価格や使われ方も改めてチェックし、薬の処方しすぎや残薬の多さを見直す必要もある。患者の負担増になる可能性もあるが、議論の先延ばしは許されないのではないか。

 遺伝子治療は神経難病だけでなく、生活習慣病にも広がり、爆発的に普及する時代が来るといわれる。治療効果の大きい新薬の誕生が、そのまま患者への恩恵となるよう、制度を整えておかなくてはならない。