新型コロナウイルスの感染拡大防止に向け、政府が企業や団体に対し、インターネットやパソコンを使って従業員が自宅で働く「テレワーク」を推進するよう呼び掛けている。

 通勤中や職場での感染リスクを減らすためで、大手企業で導入の動きが広がっている。

 テレワークは、感染予防だけでなく、災害時の業務継続や働き方改革の観点からも利点が多いと指摘されている。

 新型肺炎をきっかけに、テレワークが時間や場所にとらわれない働き方の一手法として定着するのかが注目される。そのためには、企業と社員双方がメリットを感じられる仕組みにできるかが鍵になろう。

 テレワークを可能にするインターネット環境を日々の業務で使う企業は増えており、総務省の調査によると、企業のテレワーク導入率も2012年の11・5%から18年は19・1%に増加している。

 だが、中小企業をはじめ、小売りや製造などの部門を持つ事業所からは、困惑の声も上がっている。企業の規模や業種間で温度差があるのが現状だ。

 同省の調査によると、18年の導入率は従業員2千人以上の企業が5割近いのに対し、100人以上300人未満では15%に満たなかった。全対象企業のうち、情報通信業は約4割が導入していたが、卸売・小売業や製造業は約2割、運輸・郵便業では1割未満にとどまった。

 テレワークを導入しない理由では、「適した仕事がない」との回答が最も多かった。情報漏えいを防ぐ高度なセキュリティー対策も求められ、ネット環境整備への投資に踏み出しにくい中小企業も多かろう。

 厚生労働省は本年度から、テレワーク用通信機器や保守サポートの導入などに助成制度を設けた。普及させるためにはこうした支援メニューの周知と併せ、テレワークの実施で業務改善につなげた先行企業の事例も具体的に伝える必要があるのではないか。

 人手不足が深刻化する中、人材の確保や職場への定着を図る観点からも、テレワークは重要な選択肢になりうる。

 厚労省によると、16年の大卒者のうち、就職後3年以内に仕事を辞めた人の割合は32%に上った。大手就職情報会社が20年の大卒者を対象に企業選びのポイントを聞いたところ、「休日・休暇の多い会社」を選んだ学生が8年前に比べ約4倍になった。近年の売り手市場を背景に、学生が働きやすさを重視していることが鮮明になっている。

 テレワークを応用すれば、子育てや介護を抱えている従業員が自宅で仕事が続けられる。ワークライフバランスの充実や離職防止にもつながり、多様な働き方が可能になることで、工場勤務や配送ドライバーなど在宅勤務が難しい社員にとっても業務上のメリットが生まれよう。

 柔軟で働きやすい職場環境づくりは、企業にも好循環をもたらす。まだ課題は多いが、テレワークが、その契機となるよう企業は工夫を重ねてほしい。