トイレットペーパーやティッシュなどが売り切れ、空っぽになった小売店の陳列棚(2日、京都市内)

トイレットペーパーやティッシュなどが売り切れ、空っぽになった小売店の陳列棚(2日、京都市内)

 新型コロナウイルスの感染拡大を発端に、小売店の店頭からトイレットペーパーなど紙製品が消える現象が京都や滋賀でも相次いだ。「マスクの増産で紙類が不足する」といった根拠のない情報がネットで拡散し、多くの人が買いだめに殺到したためで、京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」のLINEにも、友だち登録をしているフォロワーから買い占めの目撃情報が多数寄せられた。

 京都府大山崎町の57歳男性は「(スーパーの)店内はなんとなく殺伐とした雰囲気。デマのおかげでいい迷惑だ」と苦々しげにつづった。上京区の46歳女性は「お年寄りや体の不自由な方、産まれてすぐの赤ちゃんがいる家の方などはトイレットペーパーやティッシュがなくなったとき、手に入れられるのか? 『取りあえず』買っている人たちは、そんな弱い人のことはどう考えているのだろうか?」と疑問を投げかけた。
 ほかに、「感染拡大の要因にもなるので、自粛してほしい。何のために休校やイベント中止が行われているのか、全く理解していない行動だ」(向日市の40代女性)といった厳しい意見もあった。

 業界団体は「品薄は一時的で在庫は十分にある」とし、冷静な行動を呼び掛ける。スーパー大手の平和堂(滋賀県彦根市)では、2月最終週のトイレットペーパーとティッシュの全店売り上げがそれぞれ、前年同期の3倍以上に急増した。特に2月29日と3月1日の土、日曜に集中。京都生協や京都府北部が地盤のさとう(京都府福知山市)も同様で、購入客の殺到で在庫不足に陥った。
 ドラッグストアを展開するダイコク(大阪市)によると、商品入荷に滞りはなく、販売量が店舗の棚や倉庫の容量を上回り、品薄状態のように見えるとし、「商品は流通しているので落ち着いてほしい」という。家庭用の紙製品メーカーなどでつくる日本家庭紙工業会は、「需要を満たす十分な供給量と在庫を確保している」と異例の声明を発表。日本チェーンストア協会関西支部(彦根市)も「物流が一時的に追いついていないだけで、在庫は十分にある。すぐに品薄状態は正常化するはずだ」としている。

 ■事実、具体的に発信を

 同志社大の中谷内一也教授(リスク心理学)の話 新型コロナウイルスのように、脅威の共通認識はあるが明確な対策の指針がない中では、人は他人の行動が気になって「同調行動」が起きやすくなる。トイレットペーパーに購入が集中するのを店頭で見た人たちがさらに買い求めようとし、品薄状態が加速した。「冷静に」と呼び掛けるだけではなく、「十分な在庫がある」という事実を具体的に発信する必要がある。