古代ギリシャで4年に1度開かれたオリンピックの人気は熱狂的だった。競技が行われるオリンピアの街には、各地から大勢の観客が詰めかけた▼何百キロも歩いて会場に向かう人々は神聖な巡礼者であり、その邪魔をするのは神への冒涜(ぼうとく)である-。期間中は「聖なる休戦」とされ、あらゆる戦闘が中断された。旅の安全への心配はなかった(トニー・ペロテット「驚異の古代オリンピック」)▼紀元前776年から約1200年もの間、古代オリンピックは1度も欠かさず催されたという。一方、1896年に始まった近代五輪は戦争による中止が夏季大会だけで3度ある。今また、開催を危ぶむ声が聞こえる▼新型コロナウイルスの感染拡大で、国際オリンピック委員会(IOC)委員が東京五輪開催の判断時期に言及し、物議を醸した。戦争以外の理由で開催できなくなれば、古代、近代を通じた五輪の歴史でも前代未聞となる▼日本政府は予定通りの開催を強調するが、イベントが次々と中止され、全国の学校が臨時休校を迫られる現状は海外にどう映っているのだろう。国内はもとより、国際社会に向けた説明も十分ではない▼各国の選手や観客が抱く安全への心配を解消できるのか。いっそうの感染防止策が必要だ。ウイルスとの「休戦」はありえまい。