「バーチャルアイドル」(写真奥)などAIを駆使して実在しそうな人の顔や全身画像の生成に挑むデータグリッド=京都市左京区・京都大国際科学イノベーション棟

「バーチャルアイドル」(写真奥)などAIを駆使して実在しそうな人の顔や全身画像の生成に挑むデータグリッド=京都市左京区・京都大国際科学イノベーション棟

データグリッド社長の岡田侑貴さん

データグリッド社長の岡田侑貴さん

 モニターに愛らしい女性の画像が次々と映し出される。これらは全て、いそうでいない架空の人物だ。人工知能(AI)を駆使し、実在しない顔の画像をつくり出す「バーチャルアイドル」。リアルなのかフェイクなのか、目を凝らすだけではほぼ見破れない。データグリッド(京都市左京区) は、AIで創作系分野に挑む。

 社長の岡田侑貴さん(26)は、京都大在学中の2017年7月、同級生の小川恭史さん(データグリッド執行役員最高技術責任者)と共同創業し、会社設立。京大の産官学連携拠点に入居する。従業員46人のうち30人超がAIを研究する現役京大院生らのアルバイト。20年代半ばの株式公開(IPO)が目標という。

 ビジネス活用が進むAIは現在、株価や気象などを見通す「予測系」と、画像などを識別する「認識系」の二つが主流だ。これに当てはまらない“第3のAI”として、世界的に研究が盛り上がる「創作系」の分野で斬新なサービスの開発に挑む。社歴は3年に満たないが、大手メーカーから衣料、美容、不動産業界まで引き合いは多く、企業の期待度の高さを物語る。

 事業の基盤は、ディープラーニング(深層学習)を応用した「敵対的生成ネットワーク(GAN)」と呼ぶAI技術。実在する人物の画像や楽曲、絵画などを大量に学習させることで、本当にありそうな「作品」を生み出す。肝となるのが、元のデータだ。架空アイドルは、日本人女性ら約3万人の画像を収集した。

 精密なコンピューターグラフィック(CG)画像と異なるのは、人の手を介さず自動生成できること。豊富なデータさえあれば、無数のパターンをAIが量産する。

 人の画像の生成は、顔から全身へ広がり、現在はそれを自然に動かす技術開発を進める。今春にも、架空モデルの作成サービスをアパレル企業向けで開始。NTTドコモなどと組み、自分の画像を使って衣服の着用イメージを提供する「バーチャル試着」も計画中だ。岡田侑貴社長は「ゲームのキャラクターや医療用画像、車のデザインの生成など用途は幅広い」と語る。

 GANの進歩は目覚ましく、岡田社長は5~10年以内にAIが絵を描き、作曲し、文章を書くことも可能になるとみる。一方で「AIが行うのは過去の創作の再生産にすぎない。新境地を切り開くのはやはり人の仕事」とも。虚実の見分けがつかない超高精度な「バーチャル人間」が京都で誕生する日も近い。