娘2人の母親である国連職員の中満泉さんが、グテレス事務総長から畑違いの軍縮部門のトップに推されて間もなく3年になる。面食らったが、軍縮担当上級代表の事務次長として核兵器禁止条約を採択へ導くなど、すご腕を発揮してきた▼そんな中満さんが先頃、「際限のない核競争の亡霊が現れている」と国連安全保障理事会の会合で訴えた。来月始まる核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けた率直な思いに違いない▼NPT発効からきょう50年を迎える。五大国に核保有を認める一方、核軍縮義務を課し、半世紀前の本紙は「ようやく世界は核戦争防止のための重要な取り決めを成立させた」と冷戦下で芽吹いた希望を報じた▼米国のオバマ前大統領が「核なき世界」の実現を熱く語り、ノーベル平和賞を受賞して10年余り。核保有国は核禁条約に背を向けて戦力拡大へかじを切り、核軍縮の歯車は空回りし続ける▼父から熊本で長崎原爆のきのこ雲を目撃した話を聞かされて育った中満さんは、亡霊が闊歩(かっぽ)する危うさを看過できないのだろう。だが現実は厳しく、核廃絶は程遠い▼5年ごとの再検討会議は、決裂した前回同様に難航必至だ。核保有国と非保有国の「橋渡し役」を自任する唯一の戦争被爆国は、どう亡霊に向き合うのか。責任は重い。