肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため、政府が緊急事態宣言を発令できる新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正を目指している。

 明らかになった改正法案の概要によると、最大約2年間の時限措置として、特措法の対象に「新型コロナウイルス感染症」を追加するという。

 安倍晋三首相はきのう、野党党首と個別に会談して法改正への協力を求め、野党もおおむね前向きな姿勢を示した。政府・与党は今月中旬にも成立させたい考えだ。

 全国的なまん延の防止や経済への影響を最小限に抑えることは重要だが、住民の行動制限を要請できる宣言は国民生活の制約につながる可能性がある。過剰な人権制限とならないよう、政府は十分に配慮する必要がある。

 新型インフル特措法は、首相が緊急事態を宣言すれば、対象区域となった都道府県知事が住民の外出自粛のほか、学校や野球場、映画館など多くの人が集まる施設の使用を制限するよう要請できる。

 知事は医薬品などの売り渡し要請や保管を命令でき、従わなかった場合に罰金を科す規定もある。臨時の医療施設とするために土地建物の強制使用も可能になる。

 首相は今回の新型コロナウイルス対策で、すでにイベントの自粛や臨時休校を要請しているが、法的な根拠がなかった。

 改正法を根拠とすることで、政府要請に対する自治体や国民の理解と協力が得やすくなるとの見方もある。だが、行政の権限を強める緊急事態宣言の発令は、極めて慎重に行われなければならない。

 2012年に成立した新型インフル特措法の審議過程では、日本弁護士連合会などが「必要な最小限度を超えて集会の自由が制限される可能性が高い」と懸念を表明した。私権を制限しなければリスク回避ができないといった、厳格な要件があってはじめて発令できると理解すべきだ。

 あいまいな理由で政府が進める対策を、改正法で追認するような制度にしてはならない。

 政府の新型肺炎対策を巡っては、クルーズ船で感染者が相次いだことや、唐突な休校要請などに対して「場当たり的」といった批判が出ている。国民の不安や疑問に誠実に答えようという姿勢の乏しさが、政府対応への不信につながっているのではないか。

 感染拡大を防ぐ対策は急がれるが、なぜ法改正が必要なのか、十分に議論すべきだ。