新型コロナウイルスの感染拡大が世界の景気にも影響している。

 国際通貨基金(IMF)は、2020年の世界経済の実質成長率が昨年の2・9%を下回るとの見通しを示した。サプライチェーン(部品の調達・供給網)の寸断による生産停滞や観光への打撃で、減速が避けられないとしている。

 先進7カ国(G7)財務相と中央銀行総裁も、景気の下振れ回避のため財政出動も含めた適切な手段をとるとの声明を発表した。

 世界経済悪化に対する各国の懸念はもっともだ。効果的な支援策を探るのは容易ではないが、あらゆる可能性を考慮し、経済の安定に知恵を絞ってほしい。

 心配なのは、当局による対応策の効果を市場が見透かしているのではないかと思われることだ。

 米連邦準備制度理事会(FRB)はウイルス感染拡大による経済減速に対応するため0・5%の緊急利下げに踏み切った。緊急利下げはリーマン・ショックが起きた08年以来のことだ。

 しかし、FRBの意図に反して株価は反落した。異例の利下げが逆に市場の不安を増幅させた。

 そもそも、利下げという金融政策と感染拡大防止に直接の関係はない。「いくら利下げしても、学校閉鎖もイベント中止も止められない」という識者の指摘は、今回の利下げの限界を象徴している。

 FRBのパウエル議長は追加利下げにも含みを持たせており、追加緩和策をとるとみられる欧州中央銀行(ECB)などとの協調行動に期待感を示している。日銀の黒田東彦総裁も追加金融緩和の検討を示唆する発言をしている。

 ただ、利下げで企業や個人がお金を借りやすくしても、企業活動が停滞していては効果は小さい。

 特にECBや日銀はマイナス金利に踏み込んでおり、さらなる緩和は地方銀行などの収益悪化を加速させる。地域経済にいっそう悪影響を与えないだろうか。

 リーマン・ショックのような金融危機と異なり、今回の経済減速はウイルス感染の拡大が終息すれば改善する可能性がある。

 だが、感染が長期化すれば多くの雇用が失われ、深刻な消費停滞につながりかねない。

 各国で、景気をしっかりと下支えしていく方策が求められる。

 今回は「世界の工場」といわれる中国で感染が広がり、部品などの流通が世界的規模で滞った。サプライチェーンの過度な集中を見直すなど、企業側にも経営の再構築が迫られているのではないか。