あおり運転の根絶に向け、ようやく厳罰化に踏み出した。

 相次ぐ事故や事件を受け、政府が「あおり運転(妨害運転)罪」を新設する道交法改正案を国会に提出した。今国会中での成立、今夏までの施行を目指す。明確に犯罪と規定することで事故抑止につなげてほしい。

 あおり運転は、相手のドライバーを威嚇する異常接近や蛇行運転、急な車線変更などが含まれる。2017年に神奈川県の東名高速道路で、無理やり停止させられた車の夫婦にトラックが追突した死亡事故を機に危険性がクローズアップされた。

 警察庁が昨年10月、ドライバーに調査した結果、約3人に1人が過去1年間にあおり運転の被害に遭い、7割以上が罰則の強化を求めていることが分かった。死亡事故や暴力事件を誘発する恐れもあり、社会の目は極めて厳しい。

 ところが、現行の道交法には、あおり運転を直接罰する規定がない。警察はあおり行為に応じて車間距離不保持などで摘発。特に悪質な場合は自動車運転処罰法の危険運転致死罪などが適用され、有罪判決も出ている。ただ拡大解釈に過ぎるとの指摘もあり、法整備や厳罰化が急務だった。

 改正案は、交通の危険を生じさせる恐れがあるあおり行為を「妨害運転」と規定し、幅寄せや急ブレーキといった10類型の違反を明記。最高で5年以下の懲役または100万円以下の罰金を科し、違反点数は15点以上で即免許取り消しだ。酒気帯びや酒酔い運転並みの罰則で、大幅に厳しくなる。

 さらに法制審議会が先月、危険運転の構成要件の拡大を答申。政府は、他人の車の前に割り込んで停止して通行を妨げるなどの行為を罰せるよう自動車運転処罰法改正案もきのう閣議決定した。

 あおり運転を決して許さないという強いメッセージになるに違いない。悲惨な事故を招く飲酒運転が、厳罰化と併せた取り締まり強化によって減少したように、社会全体で包囲網を狭める効果を期待できよう。

 とはいえ重い処分を伴うだけに妨害運転をどう立証するかが課題だ。ドライブレコーダーや目撃者の証言など客観的な証拠がない場合、どうするのか。恣意(しい)的な運用を招かないよう、国会での慎重な審議を求めたい。

 法改正をきっかけに、絶対にあおり運転をしないというドライバーの意識向上も欠かせない。人の命を奪いかねない危険な行為であると自覚し、相手を思いやる運転を心掛けたい。