オフィスの一角で勉強する長男を見守る新井さん(奥)。社長の駒井さん(左)が解き方を教えてくれることも=京都市下京区・MaQビル管理

オフィスの一角で勉強する長男を見守る新井さん(奥)。社長の駒井さん(左)が解き方を教えてくれることも=京都市下京区・MaQビル管理

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、政府が全国に呼び掛けて始まった学校の臨時休校。唐突に始まった長期休みを子どもたちや保護者はどう過ごしているのだろうか。京都市内のシングルマザーや共働きの3世帯を訪ねた。

 6日午前、下京区のビルメンテナンス会社「MaQ(マック)ビル管理」を訪ねると、社員の新井恵子さん(41)が迎えてくれた。社長の自宅を兼ねたオフィスで、小学1年の長男(7)が宿題の引き算を解いている。

 正社員として経理など事務全般を担い、営業もこなす新井さんはシングルマザー。全国一斉臨時休校のニュースを聞いた時、「子供の預け先をどうしよう」と不安でいっぱいになった。
 月初めは特に忙しく、仕事は休めない。すぐに駒井敏孝社長(56)にLINEを送ると、「連れてきたらいいよ」と返信があった。学校に預けることもできるが、「感染防止のための休校なのに1カ所に集まるのは中途半端。もし感染したら後悔する」と最低限の活用にとどめるつもりだ。
 
 子連れ出勤は、長男が病気で保育園を休んだときに何度か経験があった。新井さんは「近くで見られて安心」と語る。長男は宿題を終えると、タブレット端末でのゲームや、けん玉の練習をしていた。
    
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 同じくシングルマザーの右京区の女性(45)は小学3年の長男(9)を自宅で留守番させている。時間は、女性が飲食店で働く午前10時半~午後4時半ごろまで。買い物などで2時間程度1人で家にいさせたことはあったが、6時間となると経験はない。「怖くならないか」「火を勝手に使わないか」。不安は尽きない。
 
 学校や学童保育に預けることもできるが、市内で感染確認が相次ぐ今、できれば人との接触は避けたい。長男が「家で頑張る」と言ってくれたこともあり、留守番させることを決めた。
 
 週2日程度、夜にスナックでも働く。その給料は収入の3分の1を占めるので、やめるわけにはいかない。長男を友人宅で泊めてもらうなどして乗り切る考えだが、出勤回数は抑えるので収入は減る。「春休みは家でじっとしているしかない」と力なく笑う。
 
 一番恐れているのが、自身の感染だ。子どもの預け先がなく友人も頼れない。「どうすればいいんだろう」。女性のつぶやきに、返す言葉が見つからなかった。
    
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 「『こんな事情なんで…』と顧客に頭を下げて何とか日程調整した」。左京区の経営コンサルタント渡邊和彦さん(63)宅を訪問すると、小学3年生の長男(9)の世話をしながら渡邊さんが苦労を語った。
 
 長男と妻の3人暮らしで共働き。学校で子どもを全日預かってもらうと弁当を作る必要があるので、預けるのは午前だけにした。
 
 妻は従業員が2人だけの職場で休めない。渡邊さんは仕事が最もたてこむ年度末にもかかわらず、契約先との面談時間を変えるなどで業務を午前中に集中させ、午後からは長男の面倒をみることにした。
 市内で休校が始まった5日は正午すぎに長男が帰宅。渡邊さんはラーメンを作って食べさせた。授業がなくても規則正しい生活を送れるように一日の過ごし方の表を作った。食事が終わると、漢字をプリント学習する長男に付き添い、答え合わせした。
 
 新設される休職者の所得補償も自営の渡邊さんは対象外だ。「何が一番心配か」と尋ねると、「私も大変だが、子どもがかわいそう。『3年時の基礎ができてないと4年生で苦労する』と言われてきたのに、自習では限界があるのでは」と複雑な表情を浮かべた。