「乗員は行動を制限されず、陽性だった乗客と接触していた」

 衝撃の証言である。これでは、感染が拡大するのは、目に見えていたといえよう。

 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で、新型コロナウイルスによる集団感染が起きてから約1カ月。日本人の乗員を、共同通信が取材して聞き出した。

 今月7日時点で、クルーズ船の感染者は696人に上り、国内の過半を占める。

 厚生労働省は「政府の対応に問題はなかった」とするが、乗客乗員約3700人に要請した船内待機と、感染防護策が妥当だったのか、あらためて問われている。

 乗員はほかに、「マスク以外の防護策は乗員任せだった」「症状のある乗員の隔離は徹底されなかった」などと証言した。

 船内のほとんどの場所で汚染区域と安全な区域の区別がなく、感染者のいた通路を乗員らも使っていた、とも話す。

 洋上の船内という閉鎖的な空間で、人と人の濃厚な接触があったのは、間違いなかろう。

 感染拡大を防止するため船内に乗り込んだ専門家チームのメンバーも、2人部屋に泊まる乗員同士は感染する状況にあった、と指摘する。

 乗員らの動線だけでなく、消毒やマスク、手袋の着用方法などの防護策も、適切とはいえなかったそうだ。

 感染の制御に関する知識を持った専門家を、早期に配置することが求められたのではないか。

 政府チャーター機で中国から帰国した人は、千葉県勝浦市内のホテルに滞在した。ここでの防護策は、クルーズ船とは対照的だったとされる。

 帰国者は個室で待機し、部屋を訪問するのは看護師と保健師だけで、ホテルの従業員に感染が判明した例はなかった。

 専門家チームの医師は、船内で感染確認後、早い段階で全員下船するのが望ましいと提言したが、受け入れ先がないことなどから、すぐには実施されなかった。

 これらの事例を参考にして、政府が船内待機を選んだことの是非について、きちんと検証する必要があるはずだ。

 先週は、米西部カリフォルニア州沖で、約3500人が乗るクルーズ船内に、新型コロナウイルスの感染者が多数出た可能性があると分かった。世界的な感染拡大を防ぐためにも、日本の得た経験を生かしてもらいたい。