被災地「かわいそう」脱却を-という見出しに、少々うろたえた。岩手県大槌町の小さな「大槌新聞」。1人で発行を続ける菊池由貴子さん(45)に話を聞くしかない▼「毎年、3・11を忘れないとか、お涙ちょうだいの報道が多くて」。当方も耳が痛い。「いえいえ、報道してもらえるだけありがたいですけど」▼東日本大震災から9年。大槌湾に臨む、高さ14・5メートルの巨大防潮堤は完成間近だ。復興はハード面で確かに進んでいる。しかし、菊池さんは「そもそも復興って、何のために」と問いかける▼復興が街の姿を変えていくなかで、28人もの職員が亡くなった旧町庁舎も解体撤去された。多くの犠牲者が出たことへの十分な検証はなく、大槌新聞は町民の疑問の声を繰り返し取り上げたのだが▼「被災地で起きている、いい面も悪い面も伝えていきたい」と菊池さん。美談や悲惨さではなく、原因や対策を見いだし、次の災害に備えてほしいからという▼残念ながら、大槌新聞は来月から町内全戸の無料配布をやめ、会員になれば町外でも読める月1回の有料制に変わる。資金が苦しいからだが、一方で「復興防災大学」と銘打ち講演活動も始める。被災地で踏ん張る菊池さんに、真の復興を感じると書きたいが、やめておこう。お涙ちょうだいはなし。