「復興五輪」を掲げる東京オリンピックの聖火リレーが26日に福島県からスタートする。

 だが、東日本大震災の被災住民が抱く思いは複雑だ。共同通信社が岩手、宮城、福島3県の災害公営住宅に住む被災者100人に行った対面アンケートでは、五輪が復興に役立つと期待していない人が85%に上った。

 「五輪と、生活が良くなるかは別」「わざわざ『復興』という言葉を使う必要性が理解できない」-。厳しい意見の背景には、生活基盤の再建が進まない現状への不満がうかがえる。

 大震災から9年がたち、被災地では交通インフラの整備や大規模な土地区画整理などの復興事業が進んでいる。

 だが、住民の多くはいまだ生活再建の途上にある。被災した3県の42市町村のほとんどで人口減少が加速している。宮城県女川町では減少率が41%、同県南三陸町では35%にもなり、今後のまち再生に不安を残す。

 全国各地では、なお4万7千人が避難生活を続けている。

 「復興五輪」に対する住民の複雑な思いは、これまでに30兆円を超える巨費が投じられた復興事業が個々の被災者の自立につながるものだったか、との問いを投げかけている。

 誰のための復興事業か、改めて検証されなければならない。

 問題の一つは、被災地への住民の帰還が進まないことだ。避難生活の長期化で、避難先で定住する人が増えている。

 復興庁の調査によると、原発事故で被災し一時全町避難となった福島県双葉、大熊、浪江、富岡の各町では、帰還を望む住民はいずれも各町全体の1割前後で、戻らないと決めている人が5~6割を占める。

 津波被害を受けた岩手県陸前高田市は88ヘクタールもの広大な土地造成を行ったが利用率は4割にとどまり、空き地が目立つ。

 原発と津波による被害の違いはあるが、復興事業の進ちょくに時間がかかり、生活再建を急ぎたい被災者の時間軸に合わなかったことは共通している。

 美しく立派な街ができても、住む人がいなければ復興とはいえまい。なりわいを興し、暮らしを取り戻し、かつての住民や新たな移住者を呼び込むための方策に、いっそう知恵を絞る必要がある。

 避難生活が長引き、経済的に困窮する被災者が少なくないことにも注意が必要だ。

 3県の災害公営住宅では昨年3月現在、少なくとも約2300世帯、総額約3億1千万円の家賃滞納が起きていたという。

 低額の家賃が一定の年数までしか適用されなかったり、家賃補助を打ち切ったりする自治体もある。手厚かった行政の支援が徐々に縮小している。

 プレハブの仮設住宅にはなお700人以上が住んでいる。

 こうした被災者の不安が解消されなければ、復興を実感することはできまい。生活を支える施策の再点検が求められる。

 政府は復興庁を2021年度以降も10年間存続させ、最初の5年間で復興事業の完了を目指すという。国の目線ではなく、被災者の生活実態に即した施策とせねばならない。