京の「桜守」で知られる16代佐野藤右衛門さん(91)は、これまで見たことのない自生の桜を山の中に探しにいくのを楽しみにしてきた▼そのために事前に目的地の山の高さや植生などを調べておく。特に小鳥がいるかどうかが重要だ。小鳥は桜の種子を運ぶ。生息しないところには、自生の桜が存在しないからだ▼人知れず咲く山桜を見つけるのが「一人でする花見」のだいご味であり、見つかれば、誰も知らない「自分だけの桜」に会いに行きたくなる。それが花見だと自著「櫻(さくら)よ」で語っている。実に静かで豊かな桜との交流である▼そんな藤右衛門さんの境地には及ばずとも、桜と向き合うひとときをできることなら大事にしたい。今年のように新型コロナウイルスの感染拡大で花見の自粛ムードが広がる中ではなおさらだ▼既に国土交通省は全国の国営公園で宴会を伴う花見を控えるよう要請した。京都市も円山公園(東山区)でゴザやシートを敷いての飲食や宴会を遠慮するよう求めている。せめて「一人花見」で心癒やす時間ぐらい持ちたいものだ▼日本気象協会によれば今年の桜の開花予想は、京都が20日、滋賀が25日。ともに平年より8日早い。暖冬で花の芽が目覚める「休眠打破」が遅れたが、2月以降の暖かさがつぼみを成長させたという。