新型コロナウイルス感染症について、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が「パンデミック(世界的大流行)と表現できるとの判断に至った」と表明した。

 パンデミック宣言は2009年に流行した新型インフルエンザ以来となる。WHOの規定にインフルエンザ以外の感染症で宣言する枠組みはなく、異例の表明だ。

 WHOはすでに先月28日の新型コロナの地域別危険性評価で、世界全体を最高レベルの「非常に高い」に引き上げている。

 だが、全世界で死者・感染者数の増加に依然歯止めがかからず、早期の終息が見通しづらくなっている。規定にない表現をあえて使ったのは、感染拡大への強い危機感と見るべきだろう。

 影響の長期化に備える態勢を構築する必要がある。WHOは国際連携に主導的な役割を果たし、各国の取り組みを支援すべきだ。

 これまでの各国の対策や治療で、新型コロナは感染者の8割が軽症で済む一方、高齢者や既往歴がある人は致死率が高いことが分かってきた。

 WHOは、こうしたウイルス特性や感染のメカニズムなどの情報を的確に伝える必要がある。効果があった対策や治療法などを国や地域間で迅速に共有できる仕組みづくりも急がなければならない。

 感染は今後、医療体制がぜい弱な国に広がる恐れがある。現時点では治療薬やワクチンがなく、水際対策や集団感染の拡大阻止に全力を挙げなければならない。

 テドロス氏は、大規模移動制限など大胆な措置で拡大が終息に向かう国がある一方で、「憂慮すべき無策」もあると指摘。ウイルス封じ込めは「依然主要な柱だ」と強調した。

 ただ、国内で対策を強めても、再び海外からウイルスが持ち込まれ、再流行する可能性は高い。

 同氏が封じ込めとともに、社会的・経済的な影響の緩和や発症者を治療する対症療法にも注力しなければならないとしたのは、感染の広がりを前提とする対応を求めたと解釈すべきだろう。

 適切な感染予防策を取りつつ、市民生活や経済への影響を最小限に抑えるには、専門的な知見に基づく状況判断が欠かせない。

 パンデミックには「制御不能な流行」との意味がある。09年の宣言時には、医療現場などに大きな混乱を招いたと指摘されている。強い表現には恐怖や不安をあおる負の側面があることにも留意し、冷静に対策を進める必要がある。