死刑をめぐる議論が仏教界で進められている。

 主要59宗派が加盟する全日本仏教会(全仏)が1月末に、死刑廃止について理事長談話を出した。

 「私ども仏教者は、仏さまの教えに基づいて(中略)どのように捉えていくかが問われています」との認識を示し、社会とともに議論を深めていくとしている。

 これまでの死刑議論は、主に司法や人権の観点からだ。全仏は、宗教者が向き合う「命の尊厳」の見地から考えていくという。

 宗教界が、心や死への深い洞察に基づき、死刑に向き合う意義は大きい。社会に開かれた議論となるよう、期待したい。

 一方で、死刑を望む遺族の心に、宗教者はより目を向けてほしい。募る応報感情や葛藤に接し、苦しみを和らげるのも、大切な役割ではないだろうか。

 死刑をめぐり、世界の宗教界で大きな動きがあった。一昨年夏、ローマ・カトリック教会が死刑制度に全面的に反対する方針を打ち出している。

 日本では真宗大谷派(本山・東本願寺)が、かねて死刑制度に反対し、刑執行のたびに停止を求める声明を出してきた。

 死刑廃止を鮮明にするのは1宗派だけで、全仏が組織全体で議論する意味は重い。1年かけて7回の審議を重ね、昨年12月に答申。これを受けての理事長談話だ。答申の中で、釈迦(しゃか)の不殺生の教えと死刑は「相いれない」と踏み込んだが、理事会で承認されなかった。遺族感情などさまざま課題に対し、議論を続ける必要があるとの理由からだ。

 私たちも死刑制度について考える必要がある。4月に京都市で「国連犯罪防止刑事司法会議」が開催予定で、その国連は1989年の総会で死刑廃止条約を採択している。新型コロナウイルス感染拡大で会議は延期の方向で調整中だが、この機会に死刑について改めて議論したいところだ。

 内閣府が1月に発表した世論調査では、80%超が「死刑もやむを得ない」と答えている。死刑存続の根拠の一つだが、これで国民の意思とするのは早計だ。終身刑を導入した場合を問うと、存続52%、廃止35%と意見は割れる。

 死刑容認の最も多い理由は、遺族感情への配慮だ。終身刑を導入し遺族配慮などを司法制度に組み入れたら、判断はどう変わるか。

 加えて、宗教者が語る「命の尊厳」に耳を傾けてみたい。死刑に目を背けてはならないだろう。