若竹句会。小林すみ子さん(74)=手前左=は病で6年前に失明。この日の句会では、故郷の山を思い、「秋の花図鑑片手に里の山」と詠んだ=昨年11月、福知山市内

若竹句会。小林すみ子さん(74)=手前左=は病で6年前に失明。この日の句会では、故郷の山を思い、「秋の花図鑑片手に里の山」と詠んだ=昨年11月、福知山市内

 中途失明した人々が集う俳句会が京都府福知山市にある。病や弱視の悪化によって人生の道半ばで光を失った人々が、家族との思い出やかつて見た風景を心の中に浮かべながら詠む「5・7・5」は、障害の垣根を越え、多くの人々の心を打ち続けている。

 1996年に発足した若竹句会。会員は8人で、いずれも全盲か視力がほとんどない弱視者だ。「十五夜を父とながめし肩車」「大江山裾野にゆれる芒(すすき)原」「ヘルパーの黄色い声や春隣」。昨年11月2日に福知山市内で開かれた句会では、府主催「京都とっておきの芸術祭」で入賞した会員の3句が紹介された。
 「十五夜を~」を詠んだのは会員の藤原康男さん(80)=福知山市報恩寺。生まれつき弱視で、12年前に全盲となった。4年前から若竹句会で句作を始めた。「俳句で世界が広がった。今は俳句が生きがい」
 藤原さんは目が見えていた頃を思い出し句作するのが得意だ。「十五夜を~」は、肩車した時のわが子の感触を思い出しながら子どもの目線で詠んだ。句会では、同行する妻あつ子さん(75)が「(夫は)寝ても覚めても俳句です」とかたわらでほほえむ。
 俳誌「笹鳴(ささなき)」発行者で、昨年から会員の句を指導する吉田節子さん(87)は「見えないからこそ、秋空など過去に見た光景をより美しく思い出し、風景の音や、食べ物を口に入れた時の感覚といったことに鋭敏」と話す。
 「ヘルパーの~」は中学2年で左目の視力をほぼ失った今川義弘さん(68)=福知山市三俣=が詠んだ。右目の視力も0・08しかない。ヘルパーが遠くから「今川さ~ん」と呼ぶ声の高さ、明るさに春を感じて詠み、とっておきの芸術祭で知事賞を射止めた。
 今川さんは俳句を始めて6年目。パソコンに音声入力して句作する。「ラジオドラマをよく聞く」。「音」を頼りに広大な言葉の海に入り、自分が感じた季節、光景を表現してゆく。「体験をもとに詠むだけでなく、創作にも力を入れてゆきたい」と笑顔を見せる。
 若竹句会は月1回、土曜の午前中に開催しており、4月以降は福知山市内記の市社会福祉協議会で開く予定。参加条件は市内在住で市視覚障害者協会の会員。