「奇跡の公演」という言葉まで飛び交っている。新型コロナウイルス感染拡大に伴い今月7、8日にびわ湖ホール(大津市)が無観客で上演し、動画投稿サイトで無料ライブ配信したオペラへの反響がやまない▼ワーグナー作曲の大作「ニーベルングの指環(ゆびわ)」の完結編「神々の黄昏(たそがれ)」。4部作を4年かけて上演してきた。国内で見る機会はめったになく、地方の劇場としては果敢な挑戦だ▼プロジェクションマッピングを駆使した演出は、まるで舞台が炎に包まれたり、川の水面が揺れたりするように見せる。チケットは即日完売した▼政府のイベント自粛要請を受け、公演中止を発表したのは2月28日である。それからの対応が迅速だった。数日間で関係者の意見を取りまとめ、無観客上演とDVD収録、無料ライブ配信を段取りした。「コロナに負けず最高の舞台を」との思いが一つになったという▼2日間、最多時で約1万2千人、延べ約40万人が動画を視聴し、客席数(1800)を大きく上回った。出演者は国内外の観客の存在を感じながら舞台に立ち、情熱を持って演じたことだろう▼素晴らしい舞台に感謝したい、とホールへ寄付の申し出が相次いでいる。感染防止は大前提だが、流れに身を任せるような中止への動きに一石を投じたのではないか。