19人もの命が、なぜ奪われたのか。2016年に相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた殺傷事件で、横浜地裁は元職員植松聖被告(30)に求刑通り死刑判決を言い渡した。

 「障害者はいらない」という、被告の特異で身勝手な主張とともに、社会に大きな衝撃を与えた事件である。「結果は他の事件と比較できないほど甚だしく重大」とした判決は、多くの人がその通りだと思うだろう。

 判決理由で裁判長は、動機について「園での勤務経験から『重度障害者は周囲を不幸にする不要な存在』と考えた。自分が殺害すれば不幸が減り、自分は先駆者になれると考えた」と指摘した。

 その上で「動機の形成過程に病的な飛躍はなく、了解可能」などとして争点の刑事責任能力はあったと認定した。

 だが、刑事裁判の限界も感じさせた。被告が増長させた差別思想の根源はどこにあり、何が背景にあるのか―。そこまで迫ったとはいえない。

 被告は判決前の段階では控訴しない意向を示している。事件を風化させず、社会全体で教訓を共有するためには、幅広い視野で検証を続けることが必要だ。

 被告は事件前、障害者殺傷を示唆する言動を繰り返したため、措置入院していた。退院後の支援が不十分だったとする検証結果を踏まえ、再発防止策として、都道府県などが患者の入院中から支援計画を作成するなどの精神保健福祉法改正案が検討された。

 だが「監視強化につながり、偏見を助長する」との批判を受けて廃案となった経緯がある。

 事件が浮かび上がらせたのは、社会に潜む差別意識や悪意だ。再発を防ぐには、まずそこに目を向けるべきではないか。

 インターネット上には被告に共感する書き込みがみられた。国会議員が性的少数者(LGBT)のカップルについて「『生産性』がない」などと寄稿し批判された。

 障害者らに不妊手術を強いた旧優生保護法やハンセン病の問題と「根っこは同じ」とする障害者団体などの指摘に耳を傾けたい。

 犠牲者が匿名で審理されるという異例の公判となったことも、差別を恐れる遺族の苦悩を示したといえるだろう。

 唯一、実名で審理された「美帆さん」は表情が豊かだったという。「なぜ美帆だったのか聞きたい」という母親の訴えを受け止めねばならない。