大学入試改革について考える集会で議論する高校生の保護者ら(京都市中京区・ハートピア京都)

大学入試改革について考える集会で議論する高校生の保護者ら(京都市中京区・ハートピア京都)

 大学入試改革を巡り、当事者の高校生や教員らが振り回された。2020年度から始まる大学入学共通テストで導入が計画されていた英語の民間試験、国語・数学の記述式問題の延期が昨年11、12月に相次いで決まった。混乱の要因には教育における入試の位置付けを安易に転換したまま改革を進め、課題の議論を深めなかった国の姿勢がある。

 「腹立つわ」。宇治市の高校2年女子生徒(17)は導入延期のニュースに憤った。来年の受験に向け、小遣いの半分を民間英語の参考書に充てて勉強していた。「将来に関わることをコロコロ変えるなんて」と語気を強めた。

 影響は今年の受験生にも及んだ。ある京都府立高の50代男性教諭によると、浪人を懸念し一般入試を避け、推薦入試で大学を決めた3年生もいた。「延期発表後『これでよかったのかな…』と嘆いていた。やり場のない思いをどうすればよいのか」と語った。

 延期の原因は明確だ。民間英語では経済・地域格差、複数試験を比較する公平・公正性、記述式では採点精度に関する課題が噴出した。1月に入試制度の再検討で始まった文部科学省の検討会議の資料では「(民間英語の)活用促進という大枠や方向性は示されたが、深く議論されなかった」「課題や懸念を十分払拭(ふっしょく)できなかった」としている。

 導入に突き進んだ理由は何なのか。思考力や表現力を育てようと「知識偏重の1点刻みの大学入試からの脱却」が政府の教育再生実行会議提言などで掲げられた。改革の掛け声の下、本来教育で身に付いた力を測るための入試が高校の授業内容や方法を方向付けるものに「転換」され、入試を変えること自体が目的化した感は否めない。結果、批判の声や現場の状況把握は置き去りにされてしまった。

 共通テストで測るとされた英語で書き話す力、考えをまとめ表現する力、思考力は重要だろう。だが大学の個別試験があり50万人規模で受けるのになぜ民間英語や記述式にこだわったのか。本当に育てたい力が育つのかも疑問だ。

 民間英語の問題点を指摘してきた京都工芸繊維大の羽藤由美教授は「大学入試センターなど公的機関が試験の内容や実施方法を管理しないと解決しない」と提言。共通テスト本番を想定した試行調査の国語の問題を分析した福井県立大の木村小夜教授は「出題者の意図を読み取って問題文や資料から語句を探し慌ただしく情報処理する力を測る形にとどまっていた。文章を読み込み、思考力を育むには遠い」と指摘する。

 京都でも、高校生の保護者らでつくる「大学入試改革おかしいんちゃう?高校生親の会」が集会を開くなど議論が起きた。国は当事者の声や批判に向き合ってほしい。多くの人が納得できない制度を作って再び混乱を招けば、教育への信頼は失われてしまう。