九州電力が川内原発1号機(鹿児島県)を停止した。

 新規制基準で定められたテロ対策施設の設置期限を守れなかったためで、基準を満たせず運転中の原発が止まるのは初めてだ。

 他の原発も同様に工事が遅れており、年内に川内2号機、関西電力高浜3、4号機(福井県)が停止する見通しだ。

 再稼働済みの9基中4基が止まることになる。

 来年以降も、四国電力伊方3号機や関電大飯3、4号機などが期限に間に合わず、停止に追い込まれる可能性がある。

 東京電力福島第1原発事故の反省を踏まえた新基準だが、電力側の見通しの甘さは否めない。

 テロ対策施設は「特定重大事故等対処施設」(特重施設)と呼ばれる。

 テロ攻撃を受けても重大事故につながらないよう、遠隔操作で燃料を冷却し、放射性物質の放出を抑えるのが目的だ。冷却ポンプや非常用電源などを備える。

 地形によっては山を切り開くなどの大規模工事が必要で、当初は期限を新規制基準施行の2013年7月から一律5年としていた。

 だが、規制委の審査長期化に伴い、「原発本体の工事計画の認可から5年」へと延長された経緯がある。

 原発は停止中でも燃料プールなどがあり、テロなどが起きれば重大な結果を招く。本来なら運転前に設置しておくべき施設だ。多くの原発で期限を守れないようでは電力側の安全意識が問われよう。

 昨年4月、関西、四国、九州3電力が5原発10基で完成が約1~2年半遅れるとし、規制委に期限延長を要望した。

 規制委は応じなかったが、期限に間に合わなくても、猶予してもらえるという安易な見方が電力側にあったとしたら残念だ。

 共同通信の集計では、新規制基準導入後、再稼働のための安全対策費と施設の維持費、廃炉費用の総額は、電力11社で約13兆5千億円に膨らんだ。

 加えて安全性を巡る住民訴訟による運転停止のリスクもある。

 コストの上昇で、小型で老朽化した原発は多額の対策費を投じても採算がとれず、今後も廃炉に追い込まれるケースが増えよう。

 もはや安定した電源とは言い難い原発への依存を小さくし、再生可能エネルギーを拡大していくことは、経営面からみても必要なことではないか。本腰を入れた転換を大手電力に求めたい。