2019年の自殺者数は統計を開始した1978年以来最少の2万169人だったことが警察庁のまとめ(確定値)で分かった。

 1月に発表された速報値の段階で自殺者数は10年連続の減少が明らかになっていた。人口10万人当たりの自殺者数(自殺死亡率)も前年より0・5人減の16人で過去最少である。

 それでも楽観はできない。年間約2万人が亡くなるという深刻な状況に変わりはないからだ。

 先進国の中で日本の自殺者数の多さは目を引く。政府は2017年の自殺総合対策大綱で、自殺死亡率を米国やドイツの水準の13・0人以下を目指すとしている。

 政府や自治体は防止対策に一層力を入れてほしい。

 自殺者は1997年までは年間2万人台で推移したが、98年から14年連続で3万人超となった。

 不況下で深刻化したリストラや倒産、失業が生活に重くのしかかって耐え切れず、働き盛りの中高年の自殺が急増したためだ。

 「個人の問題」とされてきた自殺が社会の問題として認識されるようになり、2006年に自殺対策基本法が施行された。

 悩み相談の拡充など、社会全体で自殺対策を推進する基盤は少しずつ整ってきたと言える。景気の回復もあり、10年連続の減少につながったとみられる。

 だが自治体で取り組み状況に差があるとの専門家の指摘もある。民間ボランティアの人手不足も課題となっており、国の強力な後押しが求められる。

 原因・動機を特定できた自殺者のうち、最も多かった理由は健康問題、次いで経済・生活問題、家庭問題だった。ただ中高年の場合、多くは経済の問題が根底にあることに留意したい。

 一方で未成年は学校問題が最も多い。心配なのは、10代の自殺死亡率が3年連続で増加した点だ。

 人口動態統計では、10代前半の死因でも戦後初めて自殺が最多となった。原因不明とされることが多いが、いじめなどで悩む子どものSOSをどうキャッチするか、周囲の目配りが欠かせない。

 さらに懸念されるのが、新型コロナウイルス感染拡大の影響だ。倒産や失業が増えることも予想され、社会のセーフティーネットを強固にしなくてはならない。

 ハラスメント対策や働く環境の見直し、性の多様性の承認など、生きづらさを抱える人たちへの取り組みは増えてきている。この流れを推し進めたい。