新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、欧米で市民の外出を規制する動きが広がっている。

 フランスでは全土で少なくとも15日間の制限を、米ニューヨーク市でも外出禁止令を検討する。

 「移動の自由」の権利を縛る異例の厳しさだ。すでに影響が及んでいる世界経済や市民生活への追い打ちとなりかねない。

 それだけ、各国は事態を重く受けとめているということだろう。

 だが、そこまでの措置を取る理由は何か、移動を制限することで感染拡大はどう防げるのか。国際社会の理解を促すような説明がなされているようにはみえない。

 深刻さがばかりがクローズアップされ、感染封じ込めに向けた各国間の協力の動きが妨げられるようなことがあってはならない。

 これとは別に欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は、非EU市民が不要不急の理由でEUに入るのを30日間原則禁止する方針を加盟各国に示した。

 先週、米国は英国を除く欧州からの入国を停止すると発表した。日本も、欧州からの入国者に2週間の待機を求める方針を決めた。

 人やモノの往来が、世界的な規模で滞り始めた。暮らしへの影響を注視しなければならない。

 EUはもともと、移動制限に懐疑的だった。加盟国の大部分は出入国管理を廃止したシェンゲン協定に参加しており、移動の自由はEUの基本理念でもあるためだ。

 しかし、感染者が拡大しているイタリアと国境を接するオーストリアやスロベニアが国境管理を厳格化するなど、国を閉ざす動きが広がってきた。特に移民拒否などで支持を伸ばした政党が力を持つ国々で強硬な主張が目立つ。

 こうした動きに、欧州委も抗しきれなかったとみられる。欧州の内向き姿勢は気になるところだ。

 入国制限については、医療品などを含む物流が停滞する恐れが指摘されている。世界保健機関(WHO)の担当者も「包括的な感染拡大防止策の一つにすぎない」と述べ、乱用を戒めている。

 水際対策に躍起になるあまり、排他的な「自国第一主義」に陥ってはなるまい。

 人の移動を抑え込めば、感染拡大のピークを先送りすることはできる。だが、感染者への対応やワクチンなどの開発の進め方について、各国間の協調と結束が求められるのはこれからだ。

 情報交換などで国際的な連携を深め、対応策を冷静に探っていかねばならない。