滋養という言葉には、自然の生命力を取り込ませてもらうような、ありがたみがある。健康の役に立つ意味は同じでも、栄養よりも体に良さそうに感じる▼そんな滋養食の代表といえる牛乳の行方が心配されている。新型コロナウイルス感染防止のための学校休校の影響だ。給食がなくなって牛乳約3万トンが行き場を失う恐れがあるという▼乳牛の健康上、搾乳はやめられない。飲用分を超える生乳は、保存の利く生クリームや脱脂粉乳に加工されるが、すでに在庫が潤沢な品目や処理能力の都合から廃棄される懸念が出ている▼つい数年前にはバター不足で大騒ぎをしたのに、国内の乳業は何と微妙なバランスの上にあることか。できるだけ廃棄から救おうと、余った給食用をスーパーで売り出したり、乳製品を多く使うレシピを発信したりして消費を呼び掛ける動きが広がっているのは生産者にも心強かろう▼戦後復興期のまずい脱脂粉乳に苦手意識が消えないという年配層も少なくないが、給食の牛乳の滋養が日本人の体を育んできたのは疑いない。その給食は現在も、貧困家庭の子どもらの健康と成長の命綱といわれている▼唐突に連発される感染症対策に戸惑い、漂流しているのは牛乳だけでない。貴重な滋養を無駄にせぬよう、知恵と汗をしぼりたい。