手記と遺書から、悲痛な叫びが聞こえてくるようだ。

 森友学園の文書改ざんを強いられ、苦悩の末に自殺した財務省近畿財務局の職員が残していた。

 「佐川氏の指示があった」「最後は下部がしっぽを切られる」

 遺族となった妻が公表した。

 同時に、自殺は改ざんに加担させられたからとして、国と当時の財務省理財局長の佐川宣寿氏に計約1億1千万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。

 森友学園の国有地売却問題発覚から約3年たつが、いまだに疑惑の核心部分は不透明なままだ。だれの指示で文書改ざんが行われたのか、裁判を通して明らかにしなければならない。特に佐川氏は出廷し真実を語るべきだ。

 安倍晋三政権や自民党からは、過去の問題とやり過ごす声が聞かれる。確かに大阪地検特捜部は、検察審査会の審査を経た上で、佐川氏を不起訴にしている。

 財務省は2年前の調査報告書で文書改ざんを認め、佐川氏ら20人を処分した。しかし、調査報告書と自殺した職員が残した手記に、相違があるのを見過ごすわけにはいかない。特に文書改ざんの指示をめぐる記述だ。

 報告書では、理財局長の佐川氏は文書を外に出すべきでなく、最低限の記載にすべきとしたが、「具体的な指示はなかった」と結論付けている。

 これに対し、手記は「元は、すべて、佐川理財局長の指示」と名指しし、野党に示す資料で森友学園への厚遇を疑われる箇所に修正指示があったと聞いた-とした。

 手記にあるように、職員は佐川氏の指示を直接聞く立場ではなかったが、上司の言動や強い要請を受けており、十分に説得力がある。新たな証言として重要だ。

 職員は文書改ざんに抵抗したが、上司らは指示を押しつけるばかりで、「これが財務官僚機構の実態」と悔しげに書いている。

 森友問題だけでなく、加計学園の獣医学部新設、桜を見る会などで公文書の破棄や改ざんが続いている。首相官邸の強い人事権の下で、官僚の忖度(そんたく)が指摘されている。

 そうした中で、手記は官僚組織の実態を内部から、しかも改ざんの当事者が書き残しているところに、重大な意味がある。

 裁判では、佐川氏だけでなく上司らの証言を求め、忖度と政権の関係、自殺に至らしめた病巣に光を当ててもらいたい。

 国会でも佐川氏を呼び、改めて森友問題の真相に迫ってほしい。