卒業式の中止を受けたホテル「La Viola」の宿泊プランを利用し、はかま姿で撮影を楽しむ女子大学生(京都市下京区)

卒業式の中止を受けたホテル「La Viola」の宿泊プランを利用し、はかま姿で撮影を楽しむ女子大学生(京都市下京区)

はかまや着物が並ぶワタベウェディングのアニバーサリーサロン(京都市上京区)

はかまや着物が並ぶワタベウェディングのアニバーサリーサロン(京都市上京区)

 新型コロナウイルスの感染拡大で、京都府や滋賀県の多くの大学が卒業式を中止し、門出に欠かせないレンタルはかまや花束を扱う関連業界に影響が広がっている。はかまは「中止になっても着たい」と女子学生を中心に予約をキャンセルする動きは限定的だ。花束などの生花は需要が大きく減少し、催しの自粛も重なり打撃を受けている。

 「目線を少し上に」。京都市下京区のホテル「La Viola」で16日、はかま姿の女子学生にカメラマンがさまざまなポーズを指示していた。ホテルを運営するZenden(同)は今月、式が中止になった府内の学生向けに、衣装のレンタル・着付け、撮影をセットにした宿泊プランを期間限定で始めた。

 利用した立命館大4年の是國明星さん(23)は「式の中止は残念だったけど、はかまが着られてうれしい。社会人になる前に気持ちの区切りが付いた」と笑顔を見せた。プランは、衣装や撮影用の花など地元企業の協力を得て実現。Zendenの前田有香社長は「卒業生は同世代。一生に一度の思い出づくりを手伝いたかった」と話す。

 感染拡大防止のためのイベント自粛要請を受け、京滋の各大学が、卒業式の中止を決めた。ただ、レンタル和装業者によると、予約をキャンセルせず、学部やサークルの集会ではかまを着用する学生は多いという。市内でレンタル着物店を2店舗運営する豊彩(下京区)の担当者は「着物より非日常を楽しめるとの理由で人気が高まっている」と最近の傾向を分析。店舗では8月末まで、今春の卒業生向けにまちなかの指定場所などでカメラマンに撮影してもらえる特別プランを提供する。

 婚礼サービス大手のワタベウェディング(下京区)も式が中止になった学生向けに、追加料金なしで撮影や街歩きができるサービスを始めた。同社のレンタル和装店舗「アニバーサリーサロン」(上京区)の橋本純治店長は「式が中止になった場合の対応に関して問い合わせが多く、『はかまを着たい』という気持ちが伝わってきた」と振り返る。

 一方で、影響が大きいのは生花などを扱う花き業者だ。花市商店(中京区)は、部活やサークルの送別会で贈られる花束の予約キャンセルが数十件相次ぎ、卒業式用に市内の大学から受けていた壺(つぼ)花の注文も取りやめに。川瀬健一社長は「受注は例年の半分以下」と窮状を語る。

 3月は彼岸などもあり花屋の書き入れ時だ。府花商協同組合(伏見区)には、業者から売り上げ減を訴える悲痛な声が多数寄せられているという。同組合副理事の川瀬社長は「式がなくても、卒業生への花のプレゼントは続けてほしいのだが…」とこぼす。

 意外な影響を受けているのが和菓子業界。卒業式後の謝恩会やサークルの集会で、「紅白まんじゅう」を配る習慣があるためだ。イベント自粛で茶会なども中止となり、市内の老舗和菓子製造会社の経営者は「春は和菓子の需要が多い時期なのに、予約がほぼすべてなくなった。業界全体が厳しい状況で、感染拡大が長引けば経営が危うくなる会社も出てくる」と懸念する。