新型コロナウイルスが社会経済活動にさまざまに影響する中、粛々と日程を消化しているのが地方選挙だ。京滋では15日、京都府笠置町長選と滋賀県多賀町長・町議ダブル選があった。22日には熊本県知事選が投開票される。

 集団感染を防ぐため、多賀町では選挙事務所の外にテントを張り、スタッフや支援者らの会話はそこでする工夫がみられた。演説用マイクは使うたびに消毒薬をかけ、有権者との握手も控えた。密閉空間や近距離での会話を避けるように、との政府の呼び掛けを受けた対応だ。

 個人演説会は、両町長選とも候補者が自主的に取りやめた。公職選挙法が認める活動をフル活用して政策を届けることができない、異例の事態である。

 今は感染防止が第一であり、やむを得ない面はある。だが、民主主義の基礎をなす選挙運動がこうした状況下で行われていることは、いずれ検証されるべきだろう。

 「お年寄りを中心に皆が家にこもり、全く盛り上がらない」「自分の訴えがどれだけ浸透したかつかめない」「訴えの機会が限られ、現職候補に比べ新人が不利」―。選挙中、街で候補者や有権者から聞いた声だ。

 投票率は笠置町74・98%、多賀町72・8%。前回よりそれぞれ5・59ポイント、7・4ポイント低下した。多賀町ではこれほどの落ち込みは過去のダブル選では例がなく、投票率が75%を割ったのも初めてのことだ。

 同様の低下は2月23日の千葉県四街道市議選(約7ポイント減)、3月8日の青森県三沢市議選(約8ポイント減)にもみられる。外出自粛と無関係とはいえまい。

 「選挙をずらすべきではないか」。街ではそんな意見も聞かれた。公選法上、期日の変更は選挙管理委員会の判断で可能だ。ただ多くの場合、現職の任期満了日が迫っているため、現実には厳しい。天災や事故で投票所が被災した場合は特別に延期できるとするものの、感染症のようなケースについては明確な規定がない。

 海外では、英国が5月のロンドン市長選など地方選の1年延期を決めた。米大統領選の予備選を延期した州もある。日本では東日本大震災の際、特例法で被災地の選挙を延ばしたが、ウイルスの流行は終息時期が見通せない分、判断が難しい。他国の取り組みも見ながら、どうすれば感染防止と選挙を両立できるか、知恵を集めたい。

 併せて、これを機に従来の選挙運動の在り方を見つめ直してもいいのではないか。

 駅前や公民館に、とにかく人を集めて演説し、握手する―というのが今の定番だ。だが、幼い子どもを抱える人や選挙区外で働いている人は、そもそも夜の集会や平日の街頭演説に参加しにくく、投票自体への関心低下につながっている面もある。

 インターネットなどを通じ、自宅にいる人にも政策を届ける工夫がもっとあっていい。いまだに町村議選では認められていない、選挙期間中の政策ビラの配布を解禁するなど、制度の改革も必要だ。