オウム真理教による地下鉄サリン事件の発生から、20日で25年が経過した。

 宗教団体が猛毒のサリンを使い、市民を無差別に殺傷するという過去に例を見ないテロであり、国内外に大きな衝撃を与えた。

 教団による一連の事件では、教祖の松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚ら13人の死刑が確定し、2018年7月に執行された。

 事件から四半世紀を経て、遺族や被害者の高齢化が進み、当時の出来事を知らない若い世代が増えている。記憶の風化が懸念されている。

 なぜ教団は活動を先鋭化させていったのか。教祖の言葉を妄信し、なぜ多くの若者らが凶悪なテロ行為に走ったのか。事件にはいくつもの未解明な部分がある。同様の事件を二度と起こさないために、「なぜ」に迫る努力を続ける必要がある。

 松本元死刑囚は殺人を肯定する教義を説き、教団の武装化を進めていった。1989年に信者の脱会活動を支援していた弁護士一家3人を、94年には長野県松本市でサリンをまいて住民8人をそれぞれ殺害する事件を起こした。地下鉄サリンを含む一連の事件で起訴された信者らは192人に上る。

 教団幹部には在学中に入信した高学歴の信者が多かった。若者たちが途中で引き返すことなく、数々の凶行で中心的な役割を担っていた。

 一連の刑事裁判では、多数の信者が関わる複雑な事件を解明するため、被告の生い立ちや入信のきっかけなどが詳細に審理された。元幹部らの刑が執行された今、裁判記録が事件の背景に迫る重要な資料となる。

 オウム事件の裁判記録は「刑事参考記録」に指定され、永久保存が決まっているが、オープンにしてこそ意義がある。テロ対策や宗教学、心理学など各方面の専門家が、服役中の受刑者からの聞き取りと併せ、裁判記録からも事件にアプローチできる態勢づくりが不可欠だ。

 被害者の救済も道半ばだ。

 一連の事件では、今なお多くの人が心的外傷後ストレス障害(PTSD)や後遺症に苦しんでいる。

 サリン事件から13年以上を経た2008年にオウム真理教犯罪被害者救済法が成立し、国は一連の事件で6500人以上の被害者を確認した。だが、長い歳月を経て連絡がつかなくなったり、加齢で症状が悪化したりと、新たな課題も出ている。国による実態把握や継続支援を検討する必要があろう。

 公安調査庁によると、教団は三つの団体に分かれて存続し、15都道府県に約30カ所の拠点がある。今も信者の勧誘と「お布施」集めを続けており、昨年10月時点の所有資産は合わせて約13億円に上るという。後継団体の一つ、「アレフ」は10億円余りの賠償金支払いを滞らせている。

 出勤途中の地下鉄車内で元教団幹部がまいたサリンを吸い、25年間、寝たきり生活が続いていた浅川幸子さん(56)が10日、亡くなった。地下鉄事件の犠牲者は14人となった。無差別テロが残した犠牲の大きさをあらためて思う。