全国で土地価格の上昇が広がってきたが、にわかに雲行きが怪しくなっている。

 新型コロナウイルスの感染拡大で人や物の動きが遮られ、まちの風景は一変した。今後どんな影響を地域経済にもたらすのか、注意深く見ていく必要がある。

 国土交通省が発表した1月1日時点の公示地価は、全用途の全国平均が前年比プラス1・4%と5年連続で上がった。

 目を引くのは、上昇をけん引してきた東京、大阪、名古屋の三大都市圏、札幌や福岡など主要4市に続き、それ以外の地方圏でもバブル崩壊から28年ぶりに上向きに転じたことだ。

 訪日客の増加に対応したホテルの進出や商業地の需要が、地方にも波及した表れといえるだろう。

 ただ、これらは新型コロナが国内で広がる前の状況だ。感染拡大につれ、訪日客をはじめイベント・行楽の客足が激減し、地価を押し上げてきた観光・商業が大きな打撃を受けている。

 長引いて景気悪化が進み、ホテル、店舗用地の需要が細れば、地価の上昇基調から反転する可能性が指摘されている。

 中でも、訪日客急増に伴うホテル進出競争で地価が高騰し、「お宿バブル」ともいわれた京都市は、環境激変による大きな影響に警戒が必要だろう。

 今回の公示地価でも、市内の商業地は東山区の23・9%をはじめ平均2桁の上昇が続くが、上げ幅は縮小した。急増した宿泊施設に飽和感が出始め、用地需要に一服ムードが生じているためとされるが、さらに新型コロナ禍が強烈な冷や水を浴びせる形となる。

 急な観光客減少で供給過多となった宿や店舗の集客確保は厳しく、営業不振による休業や撤退、賃料値下げの動きが広がれば地価の押し下げ圧力となる。金融市場の混乱が重なり、不動産投資の慎重化や富裕層らによる物件の買い控えも影響しかねない。

 採算見通しの悪化からホテル建設などの延期、凍結も考えられる。市のまちづくりの観点からも新型コロナによる観光・商業への影響、地価の動向に目を配っていく必要があろう。

 地価は、その地域の活力を表す体温計といわれる。地価の上昇が地方でも見られ始めたとはいえ、いまだ広がりを欠くことは直視せねばならない。

 値上がりは県庁所在地とその通勤圏など交通の便がよく、再開発やインフラ整備が進んだエリアがけん引した形だ。主要4市を除く地方圏の49%は下落が続いている。

 京滋でも上昇が目立つのは、京阪通勤圏の府南部や湖南地域だ。過疎・高齢化が進む府中北部や湖北、湖西などは下落が続いており、むしろ地域格差が広がっているといわざるをえない。

 それでも全国では、岐阜県岐南町が小中学校の給食費無料化などで子育て世帯を引きつけ、宅地、商業地とも上昇した例もある。参考になろう。

 地価が映し出す地域の抱える課題を共有し、克服に向けた手だてと支援策を探りたい。