喜びと生命力に満ち

 伊藤若冲(じゃくちゅう)(1716~1800年)は40歳で家業の青物問屋当主を退き、専業画家となった。と言えば簡単だが、その裏にどれほどの苦悩があったか。若冲という希代の画家を、人間・若冲はいかなる努力で作ったのか。福田美術館(京都市右京区)の特別展は、約90点の作品(うち若冲筆は約50点、展示替えあり)で若冲の生涯に迫る。

伊藤若冲 蕪に双鶏図 通期展示

 今回、若冲が30代で描いたとされる「蕪に双鶏図」を初公開する。この時期、若冲はまだ家業に従事していた。錦の青物問屋「桝屋」は地域でも大きな存在で、いまなら企業の社長ほどだろうか。その業務の傍ら描いたにもかかわらず、鶏の緻密な表現に驚く。多忙な中、わずかな暇を見つけては夢中で筆をとったのか。画面は創作の喜びと生命力に満ちる。

伊藤若冲 雲中阿弥陀如来像 通期展示

 若冲は寺院の古画や、当時最先端だった黄檗宗絵画などをよく学んだ。交流のあった禅僧たちはその才を見抜き、画家への道を支援した。絵か家業かで悩んだ時、彼らの励ましが背を押しただろう。

伊藤若冲 仔犬図 3月28日~4月27日
伊藤若冲 梅下双鶏図 3月28日~4月27日

 専業画家となってからも、若冲は技術向上の努力を惜しまない。この時代は円山応挙、曽我蕭(しょう)白、池大雅ら優れた画家がそろい、互いに影響を与え合った。会場には彼ら同時代の画家の作品も展示し、当時の画壇の空気を伝える。

曽我蕭白 寒山拾得図 3月28日~4月27日

 突然出現した天才ではなく、より良い道へと悩み、努力を続けた人。だからこそ、若冲の絵は現代人の心にも響くのかもしれない。

伊藤若冲 小槌に宝珠図 4月29日~6月21日



 ※「梅下双鶏図」は個人蔵、それ以外は福田美術館蔵



【会期】3月28日(土)~6月21日(日)。火曜休館(5月5、6日は開館し、7日休館)
【開館時間】午前10時~午後5時(入館は閉館30分前まで)
【会場】福田美術館(京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町)
【主催】福田美術館、京都新聞
【入場料】一般・大学生1300円(1200円)、高校生700円(600円)、小中生400円(300円)、障害者手帳提示の人と付き添い1人まで700円(600円)、幼児無料 ※かっこ内は20人以上の団体。オンライン割引あり
【問い合わせ】福田美術館075(863)0606