予想される無罪判決のパターン

予想される無罪判決のパターン

 滋賀県東近江市の湖東記念病院で2003年、男性患者の人工呼吸器を外して死亡させたとして殺人罪で懲役12年が確定し、服役した元看護助手西山美香さん(40)の裁判をやり直す再審は、31日に大津地裁(大西直樹裁判長)で判決が言い渡される。既に無罪は確定的だが、冤罪(えんざい)の原因に地裁がどの程度踏み込んだ判断をするのかが焦点で、大きく3パターンが予想される。

 ◆「自然死の疑い」という患者の死因のみ言及
 確定判決は、呼吸器のチューブが外れていたことを前提にした鑑定書などを根拠に、患者の死因を「酸素が途絶えたことによる急性心停止」と認定した。だが、大阪高裁による17年の再審開始決定は、弁護団提出の医師の意見書を基に、「致死性不整脈で自然死の疑い」と指摘した。

 再審公判でも意見書は証拠採用され、検察側も他殺の新たな立証は行わなかった。事件の根幹自体が揺らぐことになり、裁判所がこの点のみで無罪を言い渡すことも考えられる。だが、冤罪の構造や捜査の実態が明らかにはならない。
 
◆死因に言及し、自白の信用性を否定
 西山さんの自白は、「(呼吸器のチューブが外れると鳴る)アラームを聞いた」▽「自分がチューブを外した」▽「アラームが鳴らないよう消音機能を使って外した」などと変遷した。確定判決は西山さんが任意捜査の段階で殺害を自白し、供述内容が詳細だったことなどから信用性を認めた。

 一方、信用性について、弁護団は「口をハグハグさせて死んだ」などの自白内容が医学的に矛盾する点などから否定し、再審開始決定も「取り調べた警察官らの誘導に迎合した可能性がある」と疑義を呈している。判決が「信用性がない」とした場合、自白が虚偽と認定される。

 ◆死因に言及し、自白の信用性、任意性を否定
 弁護団は再審公判で、西山さんは軽度の知的障害などがある「供述弱者」で、取り調べた刑事に好意を抱き、結果を予想できずに迎合したと主張。警察は好意を利用して誘導し、弁護人との信頼関係の破壊も図ったとし、西山さんが真実を言えない状況だったと訴えた。「捜査機関の行為は違法性があり、任意性はない」と強調している。
 
 判決で自白の任意性が否定され、自らの意思ではないと認定された場合、捜査の不当性が明確になる。井戸謙一弁護団長は「任意性に踏み込んでこそ、『こういう取り調べは違法だ』と社会的影響がある判決になる」と話す。
 
 再審公判では、弁護団から、西山さんに有利な証拠を県警が検察側に未送致だったことや、刑事が初公判前に接見し、「否認しても私の本意ではない」という趣旨で検察官宛てに手紙を書かせたことなど、捜査上の多くの問題点が示された。こうした点に地裁がどこまで言及するかも注目される。