幼い頃から家業の製茶を手伝い、茶葉をもむことで怪力を身に付けたとされるのが、明治~大正期に活躍し、56連勝の記録を持つ横綱太刀山である。得意の突き1発で、相手を桟敷席まで飛ばしたともいう▼出身の富山市内の小学校には、「太刀山道場」と名付けられたゆかりの土俵がある。ここで相撲を始めたのが、大関昇進を決めた朝乃山関だ。太刀山以来、111年ぶりの大関誕生とあって、地元は沸きに沸いているだろう▼令和初の大相撲本場所となった昨年の夏場所で、平幕優勝した。先の春場所で初めて大関とりに挑み、1発で射止めた。とんとん拍子の出世である▼とはいえ春場所は、新型コロナウイルスの感染拡大で、これまでに例のない無観客開催だった。テレビ観戦では分かりにくいが、声援のないところで緊張感を保つのに、相当苦労したはずだ▼高校で指導を受け、3年前に亡くなった恩師から「横綱になれるのは一握りの人。富山のスーパースターになりなさい」とする遺書をもらった。これを巾着袋に入れ、場所入りした。気合も入ったに違いない▼「太刀山さんに近づきたい」と上を目指す。茶葉ではないが、無観客に気をもみ、精神力は強くなった。暗い話題ばかりの昨今、コロナの影響を突き放したスターとして輝いてほしい。