政府が今後10年間の農政の基本となる新たな「食料・農業・農村基本計画」の原案を提示した。

 カロリーベースの食料自給率は2018年度に37%と過去最低水準に落ち込んだが、目標はこれまでの45%を維持するとした。

 農林水産品の輸出増などで生産基盤を確保できるとみているからだ。

 しかし、輸出額は伸び悩んでおり、今後10年で現在の5倍を超える5兆円にするという計画の達成は容易ではない。

 むしろ環太平洋連携協定(TPP)、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)の発効、日米貿易協定の合意が相次ぎ、農産物の市場開放が自給率低下に拍車をかける心配がある。

 今回のように新型コロナウイルスの感染拡大に伴い世界各地で封鎖が進む事態を見れば、必要なカロリーの3分の1ほどしか自給できない現状は不安が大きい。

 政府は食料安全保障を軽視せずに、自給率向上に本腰を入れて取り組んでほしい。

 国内では自給率の高いコメの消費量が年々減少し、逆に輸入への依存度が高い小麦、大豆、肉などの消費が増えている。

 そうした食の変化に生産が対応できていないことも、自給率の低下につながっており、改善が求められる点だ。

 とりわけ深刻なのは、担い手不足の問題である。

 農業就業者は減り続け、昨年は168万人。しかも65歳以上が7割を占める。

 30年に140万人を見込んでいるが、新規就農拡大に向けた環境づくりと支援を相当強化しないと難しいだろう。

 農地の面積も、昨年から26万ヘクタール減の414万ヘクタールにとどめたいとしている。

 担い手農家への農地集積と並行し、野菜工場の展開などさまざまな方法で生産基盤を確保していく必要がある。

 目を引くのは、輸入飼料を与えた畜産物も国産とみなす「食料国産率」という新しい指標を設ける点だ。

 国内で生産した牛肉や豚肉でも、輸入飼料で生産されたものは「国産」とみなされず、自給率に反映されていないためという。

 ただこの指標だと、畜産の実際の規模が反映される半面、輸入飼料の実態は見えにくくなる。

 自給率には、ほかに生産額ベースの算出もある。

 目標値が多すぎて国民が混乱しないか。