政府が3月の月例経済報告で、国内景気は「厳しい状況にある」との判断を示した。2013年7月から使われてきた「回復」の文言が、6年9カ月ぶりに消えた。

 新型コロナウイルス感染拡大で経済情勢が急速に悪化しており、景気後退が避けられない事実を政府が認めた形だ。

 だが、客観的な統計に基づく景気動向指数の基調判断は、昨年8月から景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」が続いている。政府認識とのずれが、かねて指摘されていた。

 感染拡大が経済を下振れさせていることは間違いないが、景気後退の理由はそれだけではないはずだ。政府は経済の実態をあらためて直視し、適切な対策を講じる必要がある。

 3月の月例報告は、個人消費を3年1カ月ぶりに引き下げるなど全11項目の指標のうち、雇用情勢や企業収益を含む計7項目を下方修正した。国内景気は、東日本大震災後の12年7月以来となる「厳しい」との表現に改めた。

 世界経済の景気判断も、感染の広がりで活動が抑制されているとして4カ月ぶりに引き下げた。

 政府は、アベノミクスの成果を強調して「回復」の判断を変えてこなかったが、その理由に挙げた低い失業率や賃金上昇は、リーマン・ショック後の世界経済の復調によるところが大きい。

 堅調な輸出や訪日客の増加などで企業の業績は伸びたが、働き手の取り分を示す労働分配率は低迷し、個人消費は伸び悩んでいる。経済の好循環が生まれたと言える状況には達していない。

 専門家の間では、感染拡大の前から景気後退局面に入っていたとの見方が強い。18年からの米中貿易摩擦や19年10月の消費増税などの影響で、同年10~12月期の実質成長率は年率マイナス7・1%に落ち込んでいる。

 新型コロナの影響が広がり始めてからの下方修正は、感染拡大への便乗と言われても仕方ないだろう。これまでの楽観的な認識が、今後の対策の方向性を見誤らせるようなことがあってはならない。

 政府は来月にも第3弾となる緊急経済対策をまとめる。決定済みの対策と合わせ、事業費の総額は国内総生産(GDP)の1割に相当する56兆円に上るという。

 収入が減った世帯や経営が悪化している企業を着実に支援する必要があるが、ばらまきに終わる懸念もある。感染終息後の景気回復を見通し、長期的な視点に立った経済対策にする必要がある。