「体罰は指導者の横着」と指摘する吉田さん(追手門学院大)

「体罰は指導者の横着」と指摘する吉田さん(追手門学院大)

 体罰やパワハラなど、学校スポーツの不祥事が後を絶たない。部員が自殺に追い込まれたり、いじめの温床になるケースもあり、根は深い。子どもたちの環境が変わる新年度を前に、海外のスポーツ事情に詳しい吉田良治さん(日本アメリカンフットボール協会指導者育成委員会副委員長)と学校スポーツの問題について考えた。

 一昨年に社会問題となった日大のアメフト部員が起こした悪質タックル問題。吉田さんは、同部の再建プログラムを半年間に渡って担当した。コーチによる強権的な指導が問題視された。
 「日本の指導者が好んで使う『教え子』という言葉。問題はここに集約されていると感じる。指導者の側が子離れできていない表れでもある。子どもへの虐待事案とも根っこは近い」と強調する。
 アメフトコーチとして携わった米国の大学で数々の事例を経験した。5人に1人に逮捕歴があったチーム、幼少期の育児放棄など複雑な家庭環境を抱える選手…。学んだのは役割に徹するコーチの姿だ。「ミーティングでいすが足りなければ、真っ先に立つのはコーチ。飲み物を運ぶのもコーチ。下手に出るということではなく、選手を導く立場に徹している。コーチには若者を適切に導くという責務がある。だからこそ1億円の報酬が得られるほど大学や社会にも認められている」という。
 日本では長く体罰が常態化していた。「愛のムチ」「やんちゃな選手には時に必要」との肯定的な意見もあったが「米国なら選手の返り討ちに遭う。体罰は指導者の横着。言葉でコーチングできないから、逃げているだけ。体罰は暴力という犯罪行為でもある」と強く批判する。
 では、どうすればいいのか―。吉田さんは日大アメフト部での事例を紹介した。
 実践したのは、部員同士で徹底的に具体的に考える作業だ。選手として目指す理念を「スポーツマンシップ」と設定。自己規律、忍耐、尊敬などのテーマをポジションごとの小集団で討議し、発表した。
 「日大で橋詰新監督と目指したのが、学生の指導者依存からの脱却、自立だった。自立するには自ら考え行動できるようになるしかない。当初は戸惑う部員も多かったが、仲間の異なる考え方を受け入れ、刺激を受けていた」
 PHP研究所(京都市)がスポーツ庁や日本スポーツ協会と協力して昨夏出版した指導者向けテキスト「実践! グッドコーチング」の製作に関わった。多くの競技団体が教材として採用し、5月からは佛大で一般向けに行う授業で「スポーツとモラル」を担当する。
 「日本の部活は練習ばかりで、人間として成長できる時間が乏しい。米国の大学の場合は、4年かけて社会に適応する人格形成の場になっている。『アンバサダー(親善大使)』と呼ばれる卒業生は、大学を代表し社会に貢献できる人材であり、『教え子』という感覚ではない。指導者が選手の人生を背負っているか、その姿勢が問われている」

 よしだ・よしはる 追手門学院大を卒業後に渡米。1998年からワシントン大でアメフト部のコーチに就き、帰国後は京産大などでコーチを務めた。米国で人材育成に広く活用されている「トータル・パーソン・プログラム」を習得し、国内でさまざまな組織運営に携わる。昨春発足した「大学スポーツ協会」で設立準備委員会の委員も務めた。追手門学院大客員教授。大阪府出身。57歳。