新型コロナウイルスの拡大防止策として、東京都の小池百合子知事が外出自粛を要請した連休が終わった。各県知事も首都圏への往来を含め、外出を控えるよう呼びかけた。都内はじめ各地は閑散としていたようだ。

 東京では感染経路不明の人が増え、専門家も心配していた。爆発的な感染増加や都市封鎖を回避するための異例の要請である。今後も危機感を持って事態に向き合わねばならない。

 知事らの要請に法的な根拠はなく、罰則などの強制力も伴わない。市民の自発的な協力を得られるかどうかが、さらなる拡大を防ぐ鍵となろう。

 ただ、商売や通院などへの制限とも受け取られかねず、不安の声も上がっている。

 「自粛」に伴って生じた損失はカバーされるのか。多くの人が懸念するところだろう。

 安倍晋三首相は先月、イベント自粛や臨時休校を求めた際、「私の責任で、万全の対応をとる」と強調したが、万全の対応が何を意味するのかは不明だ。

 臨時休校の要請については共同通信の世論調査で7割の人が「適切だった」としているが、要請が本当に妥当だったかを検証することは難しい。

 現時点では、首相や知事の要請がもたらす不利益よりも、感染拡大にどう対処するかへの関心の方が高いようにみえる。

 終息は容易に見通せない。長引けば、自粛を求め続けるのも限界がこよう。市民が納得できる十分な説明と、具体的な対応策が示されなければ、要請への理解は得られまい。

 小池知事は安倍首相に対して政府の強力な支援を求め、27日には感染拡大に備える新型コロナ特措法の緊急事態宣言に相当するかについて「ぎりぎりの段階ではないか」と述べた。

 宣言が発令されれば、外出自粛の要請も法的根拠を得ることになる。感染を封じ込めたい知事の言葉からは、宣言への期待も読み取れる。

 安倍首相も、特措法に基づく政府対策本部を発足させ、宣言を発令できる前提を整えた。

 ただ特措法は、催事場などの使用制限や民間の土地建物の強制使用を可能とする。憲法が保障する自由権、財産権を侵しかねないとの懸念は根強い。

 強制使用などで被った損失の補償や、不服申し立ての手段がないことも問題視されている。

 緊急事態宣言は首相が行うのに、自粛要請をはじめ権利制限を伴う措置を実施するのが知事であることも見過ごせない。

 市民や企業からの批判に応える責務が知事に課せられる一方で、政府の責任があいまいにされる可能性がある。

 国民の権利に関わる難しい判断を現場に丸投げするなら、政治の役割を放棄するに等しい。

 特措法には緊急事態宣言に国会同意を必要とする規定が盛り込まれなかった。政府の恣意(しい)的な発令がなされないよう、今後も見直し議論を続けるべきだ。

 新型コロナとの闘いは長期化しそうだ。感染を広げないための協力を得るには、市民との真摯(しんし)な対話が不可欠だ。