無観客でも懸命なプレーを見せた滋賀レイクスターズの選手(3月14日、草津市・YMITアリーナ)

無観客でも懸命なプレーを見せた滋賀レイクスターズの選手(3月14日、草津市・YMITアリーナ)

びわ湖毎日マラソンで沿道から声援を送る市民ら(3月8日、大津市内)

びわ湖毎日マラソンで沿道から声援を送る市民ら(3月8日、大津市内)

 新型コロナウイルスが世界で猛威をふるう。感染拡大防止のため、選抜高校野球大会が中止となり、大相撲やプロバスケットボール・Bリーグは無観客で開催するなどスポーツ界も大きな影響を受けている。会場でじかに声援を送るファンが不在という異例の状況で、選手たちは改めて「応援の力」を痛感し、当たり前だったスポーツシーンのありがたみを誰もが思わずにはいられない。

■バスケ

 恒例のブーイングや「ディ~フェンス」の合唱はない。聞こえるのは場内BGMの中で選手の掛け声やコーチの指示。Bリーグは中断期間を経て今月中旬、2日間だけ再開した。14日に京都ハンナリーズはホームで快勝。松井啓十郎選手(34)は「静かすぎて…。ファンに見られてるという意識がない。ちょっとリラックスムードになってしまったかな」と率直に語った。京都は、ファンがLINE(ライン)を通じて寄せた応援コメントを場内の大型画面で流し、一体感を演出した。
 同日、滋賀レイクスターズはA東京とホームで顔を合わせた。チアリーダーが登場したが、演技だけで声は出さない徹底ぶりだった。A東京の日本代表、竹内譲次選手(35)=洛南高―東海大出=は「普段はファンに直接エネルギーをもらっているので変な感じはありました。でも、(映像やSNSなど)違う形で応援してくれるのだと、より感じられた」としみじみ。Bリーグではファンを「ブースター」と呼び、選手はその存在に感謝した。

■マラソン

 屋外競技でもアスリートたちが応援の力を再認識していた。今月に東京、名古屋ウィメンズ、びわ湖毎日の各マラソン大会が相次いで実施された。沿道応援の自粛要請が出ていたにもかかわらず、いずれも多くの人出があった。
 強い雨の中で名古屋を駆け抜けたワコールの安藤友香選手(26)は岐阜県出身でもあり、「『あんどう、頑張れ!』って名前が聞こえて、涙が出そうだった。あれは力になった」と感慨深げ。びわ湖毎日マラソンに出場した大塚祥平選手(25)=九電工=は「途中からすごくきつかったが、応援してくれる人が多かったので何とかゴールできた」と声援を力に変えた。

■相撲

 22日、大相撲春場所は史上初の無観客での15日間を終えた。場内は静寂に包まれ、逆に肌と肌がぶつかり合う音や激しい呼吸、塩を握る音まで聞こえるほど。場所後に大関に昇進した朝乃山関(26)は「(テレビの前のファンへ)白星を届けることが応援に応えることだと思っていた。さみしかったですね。力士にはやはり声援あってこそ。応援があっての相撲」と感じ入った様子だった。

 横綱鶴竜関(34)は「せっかくの大阪なのに、残念。でもテレビの前で応援してくれたでしょう。今度はぜひ楽しんでもらいたい」。先場所優勝の徳勝龍関(33)は「応援ってすごいんだな。力士はみんなそう感じたと思う。お客さん、声援に感謝しないと」。
 観客の目、声、存在が大相撲という舞台の一部であることを、力士たちは再確認していた。

「音」をテーマに研究する 小松正史・京都精華大教授の話

 声援が無意識のうちにアスリートの心の奥底まで影響を与えていたことが分かる。観客(応援者)の声援や拍手などをライブ中継の中で選手に伝えたり、声援や映像を配信し合えるような双方向性があってもいい。新たなスポーツ空間を構築する中ではそんな音環境の観点も重要になりそうだ。