志村けんさんのネタ作りは独特だったという。スタッフとは一言も口をきかず、何時間も黙考する。ネタができると簡単な指示を伝え、「じゃ、お疲れさん」と去っていく-▼ばかばかしいと批判されても、志村さんのバラエティー番組には根強い人気があった。考え抜かれた「笑い」が視聴者の心に響いたのだろう。作り込んでいるのにシナリオがないように見えるのが持ち味だった▼その志村さんが新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなった。テレビで何十年も親しんできた人の命が奪われるのは衝撃的だ。志村さんが住んでいた東京では感染者が急増、都知事が外出や往来の自粛を訴えた▼京都府内でも大学生を介した集団感染が発生した。ウイルス感染のリスクはさらに一段階上がったかに見える。不便でも、ここは辛抱が必要だ。密閉、密集、密接を避け、まん延防止に努めたい▼安倍晋三首相は28日の記者会見で「長期戦を覚悟する必要がある」と強調した。国民に行動自粛を求めるなら状況の説明を尽くし、とるべき対策の道筋を示し、納得して協力してもらう必要があろう。覚悟は政治の側にこそ求められる▼考え抜かれた対策のシナリオもないのに作り込んでいると見せかけるのでは、人々の心に響くまい。とても「大丈夫だ」とは言えない。