閉園時刻にヘッドライトをつけ、警笛をならす車両を撮影する来場者ら(与謝野町滝・加悦SL広場)

閉園時刻にヘッドライトをつけ、警笛をならす車両を撮影する来場者ら(与謝野町滝・加悦SL広場)

 住民や鉄道ファンに永く愛された京都府与謝野町滝の加悦SL広場が31日、閉園した。施設の老朽化などが理由で、最終日も多くの来場者が別れを惜しんだ。閉園後の車両は、全国から譲渡の引き合いがあり、町も保存に向けた検討を進めている。

 「プワーン」。閉園時間の午後5時、展示車両の警笛が、園内に響き渡った。京都府宮津市の小学校4年の男子児童(9)は「乗ったり、触ったりできて楽しかった」と話した。広場の運営に協力してきた加悦鐵道保存会の吉田博一理事長は「これを最後にはしたくない。ただ、町民の声がないと、保存会だけでは残せない」と漏らす。
 広場は1977年、旧加悦鉄道加悦駅(現・与謝野町加悦)で開業し、96年に現在地に移転。同鉄道ゆかりの蒸気機関車や気動車など27両を保存・展示してきた。閉園前の3月の来場者は昨年同期比約10倍の約6100人にも上った。
 運営してきた宮津海陸運輸(宮津市)は車両の移設先を探しており、既に青森県など全国から10件程度の引き合いがある。このうち、山口県下関市の団体は2月に、かつて現地の旧長門鉄道を走った103号蒸気機関車を視察。移設して若い世代に長門鉄道を伝えたいという。今後同社や町、府、保存会が協議を進め3カ月ほどで移設先を固める。
 一方で町は、国の重要文化財である123号蒸気機関車をはじめ、加悦鉄道ゆかりの車両を町内に保存することを検討。山添藤真町長は3月議会で「町の歴史文化遺産といった観点から一定数の車両の存続を行う必要がある」と答えた。
 青山学院大の高嶋修一教授(日本経済史)は「これまで車両の保存を企業に任せてきたが、自治体や住民だけでの維持も難しい。社会全体で産業遺産の価値を共有し、知恵や力を出し合うことが大切」と指摘した。