雪が白いのは、美しい樹枝状をはじめ多彩な六角形をした結晶の粒が、光の全ての波長を乱反射させるからだそうだ。曇りのない純白の象徴といえよう▼そんな待ち望んだ「真っ白」な無罪判決だった。東近江市の湖東記念病院の患者死亡を巡り、殺人罪で懲役12年が確定し服役した西山美香さん(40)が「雪冤(せつえん)」を果たした▼白い雪の清らかさから、無実の罪だと潔白を示し、汚名をすすぐという意味だ。大津地裁の再審判決は、患者が自然死した可能性が高いとし、そもそもの事件性さえ認められないとした▼一方で、西山さんを苦しめてきた「白」もあった。捜査段階のうその自白だ。これも判決で警察による不当な誘導の可能性から信用性が否定された。後悔と自責の重荷が多少下ろせたのではないか▼それにしても、確たる物証もなく、決め手とされた自白の真偽を正すのに15年以上も要した理不尽さ、口惜しさに言葉を失う。過ちに気付き、引き返す機会は幾度とあったのに、行き過ごしたのはなぜなのか、刑事司法に問われている▼雪の博士として知られた物理学者の中谷宇吉郎は「雪は天から送られた手紙」と記した。降る雪の結晶の形は、上空の気温や湿気の状況を伝えるという。白さをめでるだけではなく、その成り立ちを顧みる必要がある。