西山さん直筆の手紙の抜粋。「殺」の送り仮名に間違いがあるなど、字体や送り仮名のミスに軽度知的障害の特性が表れているという(手紙は西山さん提供)

西山さん直筆の手紙の抜粋。「殺」の送り仮名に間違いがあるなど、字体や送り仮名のミスに軽度知的障害の特性が表れているという(手紙は西山さん提供)

■軽度知的障害「自白」に影響、供述弱者への配慮が必要

 西山さんの逮捕から13年近くが過ぎた2017年4月。西山さんが服役を続ける和歌山刑務所で、アクリル板越しに西山さんの知的水準や発達障害の鑑定が行われた。診断した精神科医の小出将則医師=愛知県一宮市=は、出所後の鑑定も含め「軽度知的障害と発達障害」との結論を出した。

 知的水準は、単純に年齢換算できないものの成人平均の半分強程度。国際基準では「社会生活はかろうじて営めるが、判断が未熟で、他人にだまされ操作される危険性がある」とされる。また、衝動的でミスが多いなどの特徴があるADHD(注意欠如多動症)だと確定した。対人関係が苦手な傾向があり、周囲に愛されたいがゆえの虚言癖もみられると分析した。

 心の問題が「虚偽自白」にどう影響したのか、3月31日の再審判決は、小出医師の鑑定を基にして明確に指摘。滋賀県警の捜査を、「西山さんの迎合的な態度や恋愛感情を利用し、捜査機関が把握した情報を教え、捜査と整合的な自白供述を引き出そうと誘導した」と断罪し、西山さんは軽度知的障害などの影響で、県警にコントロールされ虚偽自白をした、と認定した。

 近年、取り調べに迎合したり、司法の場で意思を明確に主張できなかったりする人を「供述弱者」と捉える考え方がある。10年に再審無罪となった足利事件でも被告が供述弱者だったという指摘がある。関西学院大の京明教授(刑事訴訟法)は「誘導に弱かったり、厳しい取り調べから解放されたいと思い、自白してしまう」と指摘。障害者の容疑者に対し、専門知識を有する福祉関係者らの立ち会いが制度化される英国を例に対応の必要性を訴える。

 西山さんは、小出医師の鑑定まで、発達障害や知的障害という診断をされたことはなかった。京教授は「一見して分からない人が最も深刻。警察官がどう発見するのか。まず『供述弱者への配慮』という意識を持つことが必要」と話す。