警視庁の基本を基にした虚偽供述を防ぐための取り調べの手法

警視庁の基本を基にした虚偽供述を防ぐための取り調べの手法

■捜査機関は「証拠の王様」の自白偏重から脱却を

 裁判所の責任も大きい。15年前の確定判決は「刑事の気を引きたいだけで虚偽の自白をするとは通常考えられない」とし、西山さんのうそを見抜けなかった。

 第1次再審請求の弁護団メンバーで、「法と心理学会」を立ち上げた龍谷大名誉教授の村井敏邦さんは「裁判官は『自白の信頼性の分析』は自分たちが専門家だと思っている」と指摘する。西山さんの迎合性を指摘した心理学者による意見書は、第1次再審請求でも、今回の再審でも証拠採用されなかった。「心理分析は進歩しており、裁判所は虚心坦懐に専門家の意見を取り入れる必要がある」と話す。

 科学捜査の進歩や防犯カメラの普及で、客観証拠の精度は高まっている。「証拠の王様」という言葉に象徴される自白偏重から脱する姿勢が求められる。

■取り調べに心理学導入

 「万引きを目撃した子どもが『犯人はTシャツを着ていた』と話しました。次に何を尋ねますか」。昨年9月、滋賀県警で子どもからの聞き取り技能を高める研修が行われた。

 この問い、「どんな模様?」と聞くと、子どもはないはずの模様を答えるケースがある。講師を務めた立命館大の仲真紀子教授(心理学)は「誘導や暗示を含む聞き方は、推測や迎合による供述を生む」と指摘する。

 近年、容疑者や目撃者らの虚偽供述を防ぐための研究が進む。警察庁は、仲教授らの助言を受け、2012年から心理学的な知見を取り入れた取り調べの導入を始めた。仲教授によると、容疑者の調べでは最初に「あなたがやったのか?」などの選択肢で答える質問を投げ掛けるのは危険で、「この日の出来事を最初から話してください」など、自由に話してもらう聞き方が好ましいという。

 もちろん、正直に話す容疑者ばかりではない。仲教授は「仮に『分からない』とか、犯行を隠すための虚偽回答が返ってきても、まずは話を聞き、客観証拠と照合することで正確な捜査につながる」と話す。

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 「事件性すら証明されていない」。再審で無罪判決となった湖東病院の患者死亡。ないはずの「殺人事件」を生み出したのは、虚偽の自白を誘導し、強引な有罪立証を進めた警察と検察だった。16年にわたり無実の罪を着せた「正義」とは何か、問う。