♪香る若葉の沖の島/湖畔の名所長命寺―。近江八幡市の旧市歌はこう始まる。作曲したのは、夏の高校野球大会歌「栄冠は君に輝く」などで知られる古関裕而さん(1909~89年)。その直筆楽譜が近江八幡図書館で初公開されている(21日まで)▼鉛筆で書き連ねられた音符や、冒頭に添えられた「明るく力強く」という文字に作曲家の息づかいが伝わる。東京五輪「オリンピックマーチ」など戦後日本を励ました古関メロディーらしい曲調だ▼市歌は58年にできた。公募の詞に、「滋賀県民の歌」を手掛けた古関さんが曲を付けた。古関ファンで元市職員大西實さん(65)は「市内のどの小学校も鼓笛隊が演奏していた」と懐かしむ▼直筆楽譜は十数年前、大西さんが庁舎内で見つけた。伝わった経緯は分からない。「これは宝物だ」と、市史編纂(さん)室に移して保管していた▼10年前に合併した新市が新市歌を作り、旧市歌は使われなくなった。だが、NHK朝の連続テレビ小説「エール」の主人公のモデルとされ、注目が集まる中、楽譜も日の目を見た▼島コミュニティセンター事務局長となった大西さんは、島学区の風景が織り込まれている旧市歌を「地域の歌として大切に守りたい」と語る。昭和、平成を経て新たな命を吹き込まれ、歌は生き続ける。